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ご免侍 八章 海賊の娘(四話/二十五話)
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あらすじ
ご免侍の一馬は、琴音を助ける。大烏城に連れてゆく約束をした。母方の祖父の鬼山貞一と城を目指す船旅にでる。一馬が立ち寄った島は、水軍が管理していた。村上栄と名乗る女が一馬と勝負する。
四
槍と刀では長さの分だけ不利だ。ただ長さの分だけ動作が大きくなる、連続攻撃では刀の方が素早い動きが可能だ。村上栄が使う槍は明らかに漁師が使うような魚用にしか見えない。
(俺を魚のようにしとめる気か……)
重さのある槍を刀ではじく。確かに普通の刀ならば、槍にまきとられて飛ばされた、だが祖父の鬼山貞一が作った鬼切りは重さが違う。
びりびりと体全体が震えて鬼啼きがはじまる。
「えぃっ」
村上栄が気合いと共に必殺の突きをくりだす、どう見ても殺しに来てるようにしか感じない。鬼切りの振動した刃にふれると槍が上にはじかれる。
「むん」
槍の中程あたる部分を鬼切りで両断する。普通の刀では切れないが、特別な鬼切りは、するりと切り飛ばす。ぼとりと槍の穂が地面に落ちた。
「これは、まいりました」
しばらく呆然していた村上栄が頭を下げるので、一馬もおじぎして話を聞く。
「栄殿、この槍は実戦で使いますか」
「はい、水軍で使いました」
「私と戦う理由を教えていただけますか」
「それは後ほど……」
また頭を下げると、すたすたと屋敷に戻ってしまう。わけもわからずに、祖父の鬼山貞一の所に行くと自然に愚痴がでる。
「わかりません」
「わしもわからんよ」
さきほどの下女があらわれると、今度は屋敷の中に案内をされた。豪華な部屋は本当に大名屋敷としても通用するほどの暮らし向きに見えた。
通された部屋で座布団の上で待っていると、残してきた琴音が心配になる。
(月華も雄呂血丸も権三郎もいるから平気だろうが……)
「ごめんもうす」
声がかかると障子が開く、海の男らしい黒光りするような肌の持ち主は村上主水と名乗った。
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