SS 最高の彼女 【君に届かない】青ブラ文学部用(730文字位)
君に届かない、並んで歩きながらいつも感じる。
「なんか猫背気味?」
「だって身長がまた伸びて……」
彼女は170cmを軽く越えていた。だから自分と一緒に歩くときは、かかんで歩く。
「気にしないでくれ、俺は平気だから」
「うん……まぁ……そうだけど、バランス悪く見るかなと?」
心が痛い、確かに美人で頭も良くて背が高い彼女と並ぶと、まるで弟みたいな気分だ。
「身長ごときで、コンプレックスは無い!」
「そうよね、身長で人の価値は決まらないわ」
笑顔の彼女を見ているといたたまれない。自分が場違いのピースみたいで居心地が悪い。
でもまぁ美人なので他の男子生徒から告白が多い。彼女はもちろん断るのだが……
「おい、校舎裏」
「……」
ばんっと肩を叩かれるとごついスポーツ部員が俺をにらむ。いつもの事だ。校舎裏にいくと仁王立ちして怒鳴りつけられる。
「おまえなぁ、ちんちくりんなんだから別れろ!」
「そんなんだから、ふられるんだよ」
口げんかじゃまけないが、ボディに一発くらうとKOだ。うずくまる俺は涙目で地面を見る。
(俺は弱い、彼女と不釣り合いだ……)
「何しているの!」
彼女が颯爽と登場すると、いきなりハイキックで男子生徒を蹴り飛ばす。
「大丈夫?」
「うぐぐぐ……平気さ」
(超かっこ悪い)
「私が好きなのは、あなただけ!」
「うん」
この幸福を誰かに、わけてあげたい、過分な幸福は苦しさをともなう、いやリアルで苦しい。ぎゅうぎゅう抱きしめるから死にそうだ。
「タンマタンマ」
「ごめんね」
俺はきっと世界で一番幸福だ、学校を卒業する頃には、彼女は身長がさらに10センチは伸びた。俺は彼女と生活して生きていけるだろうか……、彼女に届くだろうか。
(もっと牛乳飲もう)