
SS 簡単な洞窟【洞窟の奥はお子様ランチ】【冒険小説風】#毎週ショートショートnoteの応募用
「洞窟探検だよ、簡単な洞窟だよ」
顔色の悪い小男が、羊皮紙のような巻物を配っている。大半の冒険者は見て見ぬふりをしていた。簡単な洞窟に入った所で、お宝は安物ばかりだ。
「あの……簡単なんですか?」
見習い冒険者のようだ。金髪の彼は、安い革製の胸当てを装備している。
「簡単なら参加したいです」
隣にいるかわいらしいツインテールの少女は魔法使い。とんがり帽子をかぶって、おすまし気味だ。才能をあふれた彼と彼女は手を握り仲良しに見える、彼らは未来の勇者になりたい。
「……簡単だよ、洞窟の奥に貴重な宝物があるんだ」
「そんなに楽なら、なんでみんな行かないの?」
ちょっと不審に感じた魔法使いの少女は、口をとがらせる。
「何、簡単と言ってもベテランには簡単すぎるだけですよ」
「じゃあ僕たちみたいな、新米なら練習にいいね」
小男は彼らに巻物を渡す。
「奥まで進んでくださいよ……」
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確かに簡単だった、魔物すらどこにもいない。罠も仕掛けもない洞窟は、ハイキングのような気軽さで深層の扉の前に立てた。
「簡単というより、これはお使いなだけじゃ?」
「うーん、そうだね雰囲気を味わうだけの探検だね」
暗く孤独な洞窟の中を進む勇気を試す、簡単な洞窟探検だ。少年が扉に手を触れると自動で開いた。中は極彩色豊かなパーティ会場みたいに華やかで……
「簡単だったな」
「女はどうする? 丸焼きか?」
「お前は力いれすぎだ、男の方は肉塊だぞ」
洞窟の奥はお子様ランチ……食人鬼達は今日も街角で宣伝している。
爽やかな日曜の昼に、すいません。