ご免侍 十章 決戦の島(十三話/二十五話)
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あらすじ
ご免侍の一馬は、妹の琴音を助けるために鬼ヶ島を目指す。父と母は敵として一馬の前に立ちふさがる。しかし船出をしたすぐに、散華衆のもう一隻の鉄甲船が、襲いかかる。船は沈み助けられたが、敵に捕らえられた。
十三
「まずは薬を抜かなくては……」
飲んだのは水だ、消化の悪い葉や実から麻薬を食べたわけではない。また水を飲んで体から流してしまえば、薬は抜ける。
台所を探そうとさまようが、ふらふらした体では時間がかかる。外に出て井戸を探す事にした。
(刀も……)
鉄甲船から海に落ちた時は、鬼切りを腰にさしていた。捕まったときに持ち去られている。
ふらふらとさまよっていると、庭のかたすみに蔵が見えた。入り口は格子戸でふさがっている。まるで牢屋だ。
「おーい、おーい、助けてくれ」
格子戸から痩せた腕が飛び出ていた。一馬はすぐそばに井戸があるのを確認すると、急いで井戸から水をくみあげて、桶からむさぼるように飲んだ。視界が徐々に戻りはじめる。
「はぁー、はぁー、どうした」
「捕まっている」
格子戸に近づき暗い蔵の中を見ると、老いた侍が助けをもとめていた。
「なんで閉じ込められた」
「家臣が裏切った」
「地下にある船の場所は判るか」
「おお、案内するぞ」
(大烏城の重臣だろうか……)
見れば聡明な顔つきで、老人とは思えない精力を感じた。一馬は近くにあるこぶし大の石で蔵の鍵を壊す。
「助かった、助かった」
「名は何という」
「お……大月小五郎だ」
「判った、大月殿、案内してくれ」
大月小五郎は、キの城で麻薬を使い多くの家臣が天照僧正に操られていると怒りをにじませている。
(母が指揮をしたのか……)
理由はわからぬが、結果は明白で犯罪者の巣となったキの城は幕府から危険な存在として、討伐の軍勢が送られる可能性が高いと感じる。
「こっちだ、こっち」
大月小五郎は、庭の奥にある茶室をめざして歩みはじめる。