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SS 禁忌の書【書庫冷凍】#毎週ショートショートnoteの応募用

 老いたエクソシストは書庫の鍵を差し込み、誰も使われていない扉をきしませながら重く開いた。

「ここが、冷凍書庫ですか」
「あだ名だよ、正式には第七階梯かいてい封印書庫だ」

 階梯かいていは魔術の位をくらい意味する。七は神の数字だ。書庫というには書棚がない。部屋の中央に書見台があり、そこに閉じられた本が置かれている。若いエクソシストは震えながら指さした。

「あそこに、少女が……」
「ああ、見えるんだな」

 暗闇の部屋は窓もないのに、なぜか書見台を確認できる。そこの部分だけ薄く光っている。そこには少女が立っていた。薄く透けて見える少女は、幼くはかなげに感じる。

「また、頼むよ」
「対価を」
「私だ」

 老いたエクソシストがやわらかく笑う。少女はページをめくると、悪魔の名前を指さした。若いエクソシストに、その名前を覚えさせる。

「●●●か、判ったありがとう。お前が対応してくれ」
「私がですか?」
「悪魔の名前を確認すれば、討滅とうめつできる」
「まだ未熟です」
「できるさ」

 老いたエクソシストが、その瞬間にはじけるように肉塊に変化した。床の肉塊は、そのまま吸い込まれて消える。

「あ……あ゛あ゛あ゛」
「うるさい、悪魔の名を知りたければ、ここに来るが良い」

 少女がつぶやく、それは雷鳴のように若いエクソシストを打ちのめす。冷凍書庫、地獄の階梯かいていが刻まれた書物……


#毎週ショートショートnote
#書庫冷凍
#怪談

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