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創作民話 悪徳お姫様は吸血鬼に狙われる2

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「ローゼットさん、お元気ですか?」
男爵家の二人の兄弟が挨拶してきた、私から見たら貧乏な連中だ
退屈なお茶会に参加したが、すぐ飽きてしまい庭に出ていた
「なにかしら」
私は退屈で死にそうだから、お話をしてあげてもよろしくてよ!
みたいな感じで、返した

兄はフランツと名乗る、体は大きく歳も若い
結婚適齢期で、お茶会で相手を探しているのだろう
弟はフランと名乗り
恥ずかしそうに話す、内気な未成年だ
私とは歳が近い

「この庭は美しいですね」
フランツは、庭は見ないで私の胸ばかり見ている
ここまで露骨だと、逆に嫌な気はしない。

「ええお庭は美しいわね、それで今は何しているの?」
「次の戦に備えて体を鍛えています」
腕の力こぶを見せつける
「まぁすごい筋肉、素敵ですわ」
なんとも思わない相手には、どんな世辞でも平気で言える。

「兄は、とても強いです、この前の大会でも準優勝でした」
フランは兄を立てるように話すが、心はこもってない
どうせ言わされているのだろう

弟のやさしげな風貌を見ていると心が動く
ただ歳が近すぎる、やはり8歳は上じゃないと男はダメね
フランツは論外

「ローゼット様、馬車がつきました」
専用メイドのアメッタが帰りの支度をしていた
どうせ長居はしない
「それでは、ごきげんよう」会釈をすると城に戻る

アメッタの顔色はずっと悪いままだが、夜には元気になる
昼間は疲れるのかしら、しばらく休ませようと考える

城に戻ると父王からの呼び出しを受ける
この国には私を含めて、姫が5人いる
私は下から2番目

王族と婚姻を結び、縁故を持とうとする貴族は両手の数より多い
「また婚約の話ね」
前回は、吸血鬼に夫を殺されて未亡人のままだ
すぐには貰い手はないだろう

「婚約者が決まった、男爵のフランだ」
父王の命令は絶対だ、ただ弟のフランは確かに未熟に見えるが
夫にするのは悪くはない。見た目も良いし、やさしそうだ。

アメッタが「また婚姻が決まりましたか」
「ええ、父から言われて断れないわ」
内心では少しうれしい

男爵の家に、式の打ち合わせで呼ばれる。
披露宴の料理の調整は必要だ。

家に入るとフランではなく、兄のフランツが待っていた
嫉妬の眼を向けてくる、うざい

「まさか姫様の相手が弟とは予想外です、
 あの腰抜けで女々しい奴よりも、私と結婚しましょう」
私の手を取ろうとするが、身をかわす
「父王が決めたことです」
父の名前を出せば、さすがに手を出せない
この男と一緒に住むことになるのは困る

「ローゼット様、いらっしゃいませ」
弟のフランが迎えにきた
手をとり部屋に案内された
アメッタは、式の打ち合わせのために席を外す

「私は夢のようです、ローゼット様」
本当にうれしそうに私の手を握る

まぁ私は姫だし、彼からすれば女神のような存在ね
「私もうれしいですよ」
自分も自然に、にやけてしまう。
恋をしたのかしら。

フランはそのまま私の胸に顔をうずめると
「ママ、ママ」と呼ぶ
見ての通りのマザコンなのだろう
これくらいは我慢できる
大した事ない

部屋の扉が静かに開くと兄のフランツが入ってくる
「ふん、こんな腰抜けが王族の姫をもらうとか間違っている」
剣を抜くと、弟を背中から刺す
細身の剣は、私の腹部にも刺さる

激痛で動けない、あの吸血鬼に噛まれて以来だ
「あなたなんて事を・・」もう言葉にならない

「やれやれ、最近の人間は感情の抑制もできないか」
吸血鬼の声がするが、どこにいるか判らない
兄が黙って床に倒れた。

吸血鬼は私の腹部に手を当てる
痛みが薄らぐと、彼は私の首筋をやさしく噛む
大きな快楽の波が来た、その快感で私は気を失う。

気が付くと腹部の刺し傷は消えていた
あの吸血鬼は噛み傷すら治すのだから、当然だ。

結婚式前の惨劇は、またもゴシップとして広がる。
巷では兄が弟に嫉妬をして、自害をした噂でもちきりだ
私と婚約をすると、夫が死ぬなんて話まで出ていた

「もう結婚は無理そうね」
「そんなことはありませんよ」
メイドのアメッタは、何やら怪しげに笑っている。


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