ご免侍　九章　届かぬ想い（二十三話／二十五話）

設定　第一章 　第二章　第三章　第四章　第五章　第六章　第七章　第八章　第九章
前話　次話

あらすじ　
　ご免侍の一馬かずまの父が、散華衆さんげしゅうの隠形鬼おんぎょうきだと暴露された。一馬かずまは、連れさられた琴音ことねを助けられるのか。大烏元目おおがらすがんめに会う一馬は、琴音ことねそっくりの城主と対面する。城に到着すると一馬たちは捕らえられた。

---

二十三

「お前の母は、散華衆さんげしゅうと通じて贄にえとなる事を決めたが、自分の力に目覚めた」
「だから、安徳天皇を復活させると」

　詳細はわからない、だが母が生きていると知って父も散華衆さんげしゅうに加わったのだろうか……

（わからぬ、何もわからぬ）

　一馬かずまは混乱していた、母が無事だった事、父は母を愛している事、そして大きな役目、怨霊にしないために安徳天皇を復活させて三種の神器を呪いから解放する事。

「一馬かずま、お前はもう何もしなくてもよい」
「琴音ことねは、どうなります」
「琴音ことねは心配はいらぬ」
「贄にえにするのではないのですか？」
「大丈夫だ、ほらここにいる」

　大烏元目おおがらすがんめを手招いて肩を抱いた。

「琴音ことねは、大烏元目おおがらすがんめとして生きる」
「もういい、どうでもいい、一馬」

　忍者の月華げっかが父の藤原左衛門ふじわらさえもんに、とび蹴りする。すくっと立った巨体は、身の丈が六尺はある大男だ。女の蹴りにはびくともしない。露命臥竜ろめいがりゅうが姿を現すと、妹を羽交い締めにした。

「離せ、馬鹿兄貴」
「月華げっか、やめろ」

　みなが上座に注目していた時に、海賊の娘の村上栄むらかみさかえが、家来から槍やりを奪って暴れ出した。

「逃げるよ」

　力なく座っている一馬を蹴飛けとばす。我に返る一馬は一回転すると立ち上がり叫ぶ。

「父上、どんな理由であろうとも、子供達を使役しえきして両親の元から引きはがすのが罪だ」

　ふところから葵あおいのご紋の印籠いんろうを出して、みなに見せつける。

「ご免侍」

　大喝だいかつと同時に露命臥竜ろめいがりゅうに向かって縮地しゅくちの術を使う、無刀であっても一馬の力は人並み以上に力が強い、ひじ打ちをふとももに打ち込んだ。

ご免侍｜wsd983320987｜note

#ご免侍
#時代劇
#届かぬ想い
#小説