ご免侍 九章 届かぬ想い(七話/二十五話)
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あらすじ
ご免侍の一馬の父が、散華衆の隠形鬼だと暴露された。一馬は、連れさられた琴音を助けられるのか。
七
後頭部に手をやりながら傷みをまぎらわせる。露命月華が、容赦なく、一馬の後頭部を乱暴に蹴飛ばして部屋から追い出す。
(忍者は乱暴でかなわん)
今の月華が素なのは判る。かわいげはないが、生き生きとして見えた。そこには嫉妬深いが、それだけ好きな男の事を愛する少女の姿があるように思う事にした。
みなが朝飯なのか箱膳が置かれていた。中央には隠密頭の天狼が、どっかりと座り円陣を組むように鬼山貞一や村上主水も座っている。
(決起集会のような)
隠し事の密約をするような雰囲気で異様だ。天狼が手招きをする。
「一馬、飯を食え」
「はい……」
円陣に加わり、白米と焼き魚を食べる。さすが漁師が採ったばかりの魚は滋養があるのかすこぶるうまく感じた。
「それでじゃ、まずは岡山城の大烏元目を倒す」
「城主を倒しますか」
「なに賊に殺された事にすればよい」
「乱暴ですな」
「幕府に知られれば下手すれば改易じゃからな、失態を隠そうとするから時間をかせげる」
天狼が鬼山貞一と村上主水に物騒な事を説明している。
「それで誰が倒すのですか」
「そこの男だ」
飯を食っている一馬に指を向ける。飯が喉につまりそうになった。茶を急いで飲んで落ち着いてから答えた。
「……わかりました」
「うむ、まかせたぞ」
「はい……それで、どのような手段で事を運びましょうか」
「うむ、まかせたぞ」
丸投げである。相談ではなく命令だ。そして方法もわからない、一馬は眉間にしわを寄せながら倒す方法を念じた。