SS ダジャレバナナ #爪毛の挑戦状
顔を白く塗った道化が恐怖の表情で固まっている、手には黄色いバナナを持って舞台に立っていた。王はつぶやく。
「ダジャレバナナだ、笑わせろ」
「このバナナが黄色いのは……、太陽が黄色いから……」
王様は黙って首を切るまねをする。舞台の上の道化は悲鳴を上げながら兵隊に連れていかれる。
「つまらん、次を呼べ」
王様は気まぐれな性格で無能だ。主君に落ち度があったとしても、交代は難しい。無能でも害にならなければ放置される。彼はひたすら笑いを求めた。面白いことが大好きな王様は、国内の道化を集める。
「次の道化は、新人のようです」
「バナナで笑わせてくれよ」
期待しながら彼は舞台を見守る。そこには貧相な老人の道化が立っている。老人をいぶかしげに見ながら、道化にバナナを渡すよう命令する。
「バナナだ」
「これで笑わせればいいのかい? 」
道化の老人はバナナを股間に当てると珍妙な踊りをしながら、バナナを振った。あまりの馬鹿げた行為に王様は大笑いをする。ゲラゲラと笑いながら、よだれを垂らす。笑いが止まらず息が止まりそうになる。
「面白いぞ、褒美をやれ」
王様は自分も舞台に上がると、バナナを持って踊り始めた。自分の行為でも大笑いできる。笑いが止まらない、自分の行為を止められない。家臣がしばらくして異変に気がつき、王様を制止しようとするが止まらない。王様は食べずに飲まずに眠ることもしないで踊り続けた。はじめは心配していた家臣も気が触れたと判断して、後継者の準備をする。
xxx
「もうけたなじいさん」
道化の老人は門番に金貨を数枚渡すと国を出た。しばらく歩いてから白い顔をつるりとなでると、その下から赤黒い皮膚の悪魔の顔になる。
「地獄でサタン様が待ってるぞ、魔王様の前でバナナ踊りをしてくれ」
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?