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SS 怪談:地下室のみち子【山岳カルマ】#毎週ショートショートnoteの応募用(930文字位)
暗い山道を三人で歩く。急な登りは通勤列車ばかりの俺にはつらい。
「なぁ、どこに行くんだ」
「みんなの村よ」
「廃村になった……」
村の分校に通っていた。俺たち四人は仲良しで、同じ村に生まれて育ち、幼なじみが死んだ。
「みち子は、まだあそこかな……」
ぞっとするような記憶がよみがえる。
「その話はやめろよ」
「あれは、みち子が悪い」
子供の頃は男女二人ずつでペアのように遊んだ。幼い男女がする事は……
「思いだしたくない……」
「みち子だけが嫌がってたからな」
今と違い性の遊びは、昔はもっとゆるかった。まるで動物と同じで自然と体に触れていた。
「何しに行くんだ」
「まだ居るか確かめる」
馬鹿げている、何十年も前の話だ。生きているわけがない。それでも確かめずにはいられない、自分の罪を確認するために登り続ける。山頂のお堂が見えた。
【山岳カルマ堂】
古寺は密教の修験者が寝泊まりしていた。ずっと昔に廃れている。だから使われていない地下の部屋は子供達の秘密基地になる。
「ここだ」
「ここよね」
床に木製の落とし戸がある。やや大きな岩が何個か置いたままだ。下からは押し上げられない。みち子は閉じ込められたまま……
みな黙って石をどかして、戸を開く。湿った空気とカビのにおいがする。懐中電灯をつけてゆっくりと降りると、昔のままだ。広い地下室には、遊んでいた汚い布団と……みち子が立っている、
「みんな、遅いよ」
クスクスと笑うと嬉しそうに近づいた。ただ恐怖しかない、誰も動けない。
「みち子、ごめんよ」
「ごめんさない」
みなが泣いて謝る、みち子はゆっくりと顔を横にふる。
「ちょっと退屈していただけ、あれと遊んでたから……平気よ」
部屋のすみに、黒い何かがいる。腹のふくれた頭の大きなソレは、地獄の餓鬼に見える。
「じゃあ、交代ね」
みち子は俺の手にタッチすると階段をかけ昇る。バタンと落とし戸が閉まった。
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「みち子どうしたの?」
「みんながね、あのお堂で遊んでて……」
幼いみち子は、村に戻って大人達に泣いて謝る。子供が遊んではいけない場所、だから私は中には降りなかった。みんな、ごめんね。私だけが人生をやりなおし出来て……