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ご免侍 七章 鬼切り(十話/二十五話)

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あらすじ 
 ご免侍の一馬かずまは、琴音ことねを助ける。大烏おおがらす城に連れてゆく約束をした。祖父の藤原一龍斎ふじわらいちりゅうさいは、一馬を刀鍛治の鬼山貞一おにやまていいつに会わせる。貞一ていいつの娘が母親だった。そして母は殺されていた。鬼山貞一おにやまていいつから、母は生け贄にされたことを知る。生け贄の場所は大烏おおがらす城だった。


 一馬達は、あわてて鬼山貞一おにやまていいつの家に向かう。庭に男が立っている。露命月華ろめいげっかが、忍者刀を抜いて対峙たいじしていた。

月華げっか
「来るな」

 一馬が叫ぶと、月華げっかが、より大きな声で叫び返す。立っているのは月華げっかの兄、露命臥竜ろめいがりゅうだ。一馬が叫び注意を引く。

「俺が相手だ」
「……」

 無言で露命臥竜ろめいがりゅうの長身の体がくるりと一馬にふりむくと、大太刀おおだちをふってくる。無拍子むびょうしで人とは思えないような動きだ。

 鬼切おにぎりを抜刀して受ける、すでにいているのかビリビリと腕が響く。鬼切おにぎりが、大太刀おおだちの刃に食い込むと相手の刀を振動させる。
 
 ジャリッっと嫌な音がすると臥竜がりゅうの刀が削れた。

「妙な刀だな」

 ぼそりとつぶやくと、とてもつもない突きが来る、一馬はあわてて飛びすさる。

拙者せっしゃが、お相手しますぞ」

 雄呂血丸おろちまる柳葉刀りゅうようとうを抜くと臥竜がりゅうに斬りつける、ほぼ力技なのか金属音が高く響き渡る。雄呂血丸おろちまるは単なる大道芸人の筈だが、剣の筋は決して悪くは無い。

 ガンガンと打ち込むと臥竜がりゅうは防戦をしながらも相手の力量を見ていると思える。

(いかん、このままでは雄呂血丸おろちまるが倒されてしまう)

 一馬も参戦しようとしたとたんに、琴音ことねの悲鳴が聞こえた。同時に雄呂血丸おろちまる柳葉刀りゅうようとうが吹き飛ばされる。

 金鬼こがねおにが、琴音ことねの首を太い腕でしめる。

「動くなよ」

 後ろから臥竜がりゅうの剣が来る、避けても逃げられるのか判らない。その迷いが命取りだ。

(うぬ、臥竜がりゅうを倒す)

 体捌たいさばきで流れるように体を横移動させるが、臥竜がりゅうの刀も追従する。避けきれないと思った瞬間に、臥竜がりゅうの刀が跳ね飛ばされた。

「なぁ、おぬしはなんで戦うのじゃ……」

 鬼おろしを持った藤原一龍斎ふじわらいちりゅうさいが、ふらふらと立っていた。

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