SS ニガグリ【モンブラン失言】#毎週ショートショートnoteの応募用
「呪われた山だろ……」
「大丈夫さ、山なんて怖くない」
村人は一瞬だけ驚いた顔をしたが、すぐに平静に戻る。
「館を見たら入っちゃいけない」
「どうして?」
「悪魔がいる」
迷信深い村人は、忠告はしたと言わんばかりも黙ってしまう。私は気にしないでモンブラン山を目指した。夜になりテントの場所を探していると、館が見えた。恐れることもなく扉を叩くと年老いた老婆が顔を出す。
「宿を借りたい」
「いいですよ」
一晩の宿を求めると夜食を提供される。デザートは栗の味がするケーキだ。だが栗は苦手で、スプーンを置いた。
「ごちそうさま」
「まだ一口ですよ」
「味が……」
失言だ、老婆は怒りに震えるとモンブランケーキを私の口に強引に押し込む!
「わたしのケーキが、まずいかぁあ」
その後の記憶はあまり無く逃げ帰った。モンブラン山の恐ろしい出来事だ。今でもモンブラン失言として苦栗のように舌に残る。
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