SS 怪人制御冷や麦 #毎週ショートショートnoteの応募用
うだるような四畳半で寝そべりながら、扇風機の生ぬるい風にあたる。
「大家も冷房くらいつけてくれよ」
怪人修行で五年目だ。オーデションに受からない。バイトしながら悪の組織に入るんだと頑張っていた。
「君は特徴ないからね、君はカニ怪人だっけ? 造形がありふれてるからねぇ」
別にカニでもいいだろうと思う。カニ怪人とか子供にも受ける。殻は固いしハサミは格好がいい。スターになれると思った。
「おい、暇か?」
「することない」
相方のテナガエビ怪人がドアを開けて、熱気でうんざりした様子だ。
「冷や麦もってきた」
「いいな、冷や麦」
「台所でゆでるぞ」
「氷あったかな」
相方は貧弱だ、確かにリーチは長いので攻撃は当てやすいが非力なのだ。暴力には向いていない。
「俺はもう辞めるよ」
テナガエビ怪人が悲しそうに冷や麦をゆでる。
「そうか……何するんだ」
「冷や麦でも作って売るよ」
「そうだな……」
「それでな、お前も一緒に働かないか」
「……」
スターになる夢を追い求める、格好いい生き方だがいつまでも続かない。
「ああ、冷や麦作るか」
「怪人制御冷や麦で売ろうかなと」
「ネーミングひどいな」
「お前が、そのハサミで冷や麦をちょきちょき切りながら食べるポスター作るよ」
赤いカニが、冷や麦を切って食べているポスターが街角で貼られている。ひっそりと貼られたポスターは、通行人からは無視されている。だって今は真冬、うどんだったら良かったかも……
※難題すぎて泡をふきました。
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