ご免侍 九章 届かぬ想い(十三話/二十五話)
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あらすじ
ご免侍の一馬の父が、散華衆の隠形鬼だと暴露された。一馬は、連れさられた琴音を助けられるのか。
十三
大烏元目は、ひざをずいっと進めると三人の顔をじっくりと見つめる。
「城をたばねているのは天照僧正だ、母を止めてくれ」
「忍者の里……」
忍者の月華が、ぽつりとつぶやく。一馬はうなずいた。
「そうだな、まずは子供達を助けないと。判った、散華衆の里を潰そう」
「そんなに簡単にいくのかい」
海賊の伊藤加代は疑わしそうに眉をあげる。確かに忍者の里の規模はわからない、そして露命臥竜がまだ生きている。あの男と藤原左衛門を同時に相手にして勝てると思えない。
「まずは、こちらで宿を用意する」
「助かる」
土地に不慣れな一馬たちは、大烏元目の側近と城下に向かう事になる。
(確かに似ている……)
大烏元目と別れてからも、城主の立ち振る舞いが琴音とどうしてもかぶってしまい落ち着かない。一馬の顔を見ながら月華が、一馬の腕をひじでつつく。
「本当に大烏元目は、琴音じゃないの」
「え……」
「琴音とそっくりに見える」
「俺も間違えそうになる……」
やりとりを聞いている村上栄がつぶやく。
「大烏元目は、年若い女だ」
「わかるのか」
「匂いでわかるさ、彼女は城主になったんじゃないのかい」
琴音は、大烏城に行きたかった。理由は皇族と婚姻するためだと聞いたが……本当の所はわからない。元の城主は、父の藤原左衛門に殺されたのではないのか……疑惑が広がりはじめた。