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SS よく鳴る料理ですね。#ストーリーの種

俺はマイナーグルメオタクの馬居望男うまいぼうおだ。今日は不思議な料理を食べる事になる。いつもの女編集長に連れて来られたのは魚料理の専門店だ。

「ここは日本料理を出してくれるの」

老舗の店は格式もあるのか普段は来ない雰囲気で俺はビビるが席に座ると
すぐに別の男達が来た。

「今日は他社の人達と一緒に試食してくれと頼まれたの」
聞いて無い。先に言ってくれ。俺の前に座ったのはライバルの崇高部すうこんぶだ。なんでここに居る?こいつは辛口記事が得意で下手に刺激すると店が潰れるレベルで記事を書く。

「馬居か、相変わらずなまぬるい記事で受けは良さそうだな」
ほっとけ

「お前も炎上狙いなのか豆腐屋を批判してたな」
年間パスポートを使い無料で食べられる豆腐料理を酷評した。それに影響を受けてネット民が暴れたお陰で店が潰れてしまう。こいつは罪悪感をまったく感じていない。味は主観でしかない。自分が良かったと思うことを書かないと好き嫌いでしかなくなる。

「今日は川魚料理です。」
女編集長が場をとりなすように紹介する。女給さんが料理を運んできた。大きな川魚は、雷魚だ。まだ生きていた。料理長がその場で料理する。100cmは超える大きさで迫力満点。

まな板に乗せた雷魚の心臓を串刺しにする。ぐったりした所で、いきなり奇怪な音がする。雷魚が鳴いているのだ。

「よく鳴る料理ですね。」
崇高部すうこんぶが皮肉を言うが、彼の顔もひきつっている。俺も死んでいる魚が鳴く理由が判らない。料理長も判らないらしいが、鳴いている雷魚の腹を裂いた。鳴いている声は空気が抜けていると予想したが……腹からでかいウシガエルが飛び出る。

「カエルかよ」
雷魚はカエルが大好きだ。まだ生きたままのカエルが腹の中に残っていた、飛び回るカエルで大騒ぎになる。その日は雷魚とカエルを食べる事にした。どちらも淡泊な味で俺は満足した。

xxx

『老舗の日本料理店で蛙料理を出す仰天レポート』
崇高部すうこんぶのいつものアンチ記事だが、読者には刺さらないらしく珍しさで客は増えた。

「奴の記事は鳴かず飛ばずか…」

終わり


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