ご免侍 九章 届かぬ想い(十五話/二十五話)
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あらすじ
ご免侍の一馬の父が、散華衆の隠形鬼だと暴露された。一馬は、連れさられた琴音を助けられるのか。
十五
海賊の娘は、土地柄のせいか奔放な生活を送っていた。十分に楽しむと彼女は一馬を解放する。
(これではまるで男女の役割が逆だ)
栄の汗に濡れた体は稽古した後の侍にも似ている。一馬からするとまさに稽古をしていた気分だ。もちろん快楽はあるが、攻められる行為は戦いと似ている。攻めて攻め返す、攻められても、攻めても心地よい。
(こんな事は、初めてだ……)
てぬぐいで体をぬぐうと風呂に入りたくなる。身支度をととのえると、また酒を飲み始めた栄を置いて一階に降りる。階下には月華が風呂上がりなのか濡れた髪をといていた。
「あっ」
「あんた……本当に……」
匂いで判る。当たり前だ。月華は、前のように怒りはしなかったが、笑いながら近づくと殴られると体を硬くした一馬の口を吸う。頭がしびれるような快感で半眼になる。
「あんたはいつか女で死ぬ眼にあうね」
「ああ……」
下腹部の少し上、下腹をおもいきっり殴られる。月華は、悶絶するように座り込む一馬を残して二階に上がる。
(確かに女難だ……)
腹をさすりながら風呂場を探した。豪華な作りの宿屋なので、内風呂が用意されている。中に入ると下女が正座をしてまっていた。背を流すための湯女だろうか。
「湯に入りたい、今は誰かいるか」
「おりません」
一馬が服を脱ぎはじめると湯女が手伝う。誰かに服を脱がせてもらうのは嬉しい。まかせると下帯もほどく。そしてそっと手で握った。
(湯女だから、下の世話もするのか)
ゆっくりと動かすと手の使い方に覚えがある。
「お仙か」
「無防備だね」
ぎゅっと握られるとあわてた。
「今までどうしていた」
「あんたの父親からの伝言だよ」
「どんな話だ」
「合流しろってさ」
父親は一馬の事を敵とみなしていなかった。