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SS 穴の中のアリス【#穴の中の道に落ちていた】 #爪毛の挑戦状
穴の中の道に落ちていた、アリスはホワイトチャペルにある下水口の出入り口をよく知っている。
(早く逃げないと……)
アリスは貧民街で生きていた子供で、窓からのぞいていた彼の殺人を目撃するとネズミのように逃げ出して、下水口に入りこむ。
(捕まる……そしてバラバラにされる)
遠くから足音が聞こえる。彼が追ってきた、つかまって内臓を抜かれる。暗い下水口を左右に逃げたが道を間違えたのか袋小路に入り込む。
「逃げなくていいんだよ」
彼がやさしげに呼びかける、端正な顔、上流階級の男性、年老いた彼は老人だ。
「何も見てない」
「そうさ、君は何も見てない」
「お願い殺さないで」
「殺さないよ、僕は少女の味方だ……少女は永遠なんだ、永遠さ」
ぶるぶると震える手には『不思議の国のアリス』、表紙には、さみしげなアリスが描かれている。彼は、腰から大きなナイフを取り出す。
「永遠を生きよう!」
通路を歩き出すと彼はずるりと足をすべらす、落ちた先はよどんだ下水だ。ドブンっと落ちると二度と浮かんでこない。彼は永遠の少女を探していたのかもしれない、娼婦達の体内から救い出すために……
通路に落ちた『不思議の国のアリス』を拾うと、アリスは売る場所を思いだしながら地上への道を探す。
※実在の作家、少女とは関係はありません。架空の設定です。