ご免侍 八章 海賊の娘(八話/二十五話)
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あらすじ
ご免侍の一馬は、琴音を助ける。大烏城に連れてゆく約束をした。母方の祖父の鬼山貞一と城を目指す船旅にでる。一馬が立ち寄った島は、水軍が管理していた。海賊の娘、村上栄は協力する代わりに一馬との婚姻を望んだ。
八
カンカンカンカン
軽快な鐘の音がした。火事で使われるような半鐘だろうか、港全体に響き渡る。
「敵襲!」
その声と同時に、大筒の着弾音が聞こえる。爆発する音はその場の全員を戦闘態勢にした。
「またきたのか!」
村長の娘の村上栄が港に向かって走る。
「なにごとですか」
「なんで大砲を撃たれるのよ」
「月華、琴音をあの屋敷に」
それだけ言うと一馬は混乱する港に走る。港には大きなクロガネの船が港に突入する。港は水深があるのか大きな船が入港できた。
(あんな船で突入されたら、他の船が壊れてしまう)
バリバリと停泊している小舟を破壊して、侵入する船からまた大筒が発射された。小屋に命中すると跡形もなくなる。
(鉄甲船か)
船は帆もあるが左右に櫂があるので、それで海を進むのだろうが、あまりにも巨大だ。船の見える所は銅で補強されていた。雄呂血丸達が走ってきた。
「一馬殿、あの船には勝てませぬ」
「大筒だけで港は全滅してしまいます」
「ここの村長の娘が港に向かった、俺はむかえに行くから、あの屋敷で待っていてくれ」
刀を抜いて肩にかつぐと全速力で港まで走る。鉄甲船から何隻か小舟が降ろされて、港に向かっていた。
(これなら勝てる、敵は自分の味方は撃たないはずだ)
そうは思っても、金鬼の時は、味方を捨て駒にして戦っていた。
だが心配ばかりをしても意味はない。先ほどまで乗っていた船は爆発でもしたのか燃えかすだけが浮いている。白煙が多く視界も悪い。
「栄殿」
村長の娘を呼ぶが答えない。周囲には大砲で破壊された人体が転がっている。
(油断した、行かせるんじゃなかった……)
状況判断がにぶったのは致命傷だ。ウロウロと探していると、敵の小舟が砂浜に突入する、小舟から下りた敵は、白い面をかぶった、若い男達に見える。