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SS 流転1 ケモナーワールド

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説明:世界大戦の後に生まれた新人類達は、動物のDNAを埋め込まれた人間達だった。

犬族のアルマは地主の息子に嫁ぐ事に決まっていた。
「かあさん、私は独立して働きたいわ」
母は困った顔をしながら「お父さんがね、破談は無理よ」
自分でも判っている、今は耕作地が前大戦の影響か少しずつ収穫が減っている。
「私は都市で働きたいの」
それなりに勉強ができるから挑戦してみたい。

「だめだ、この土地を誰が守るんだ」
父親が決めつけるように遮る。父は先祖伝来の土地に固執をするだけだ。
私は黙って、食事を続けた。

世界大戦が起きてから数千年は経過した。私たちは動物のDNAを取り込む事で衰退していた人類から別の種類の動物に変化をした、各種の獣人はコロニー内で共存しながら生きている。

それでも土地へのダメージは計り知れない、肥料などを与えてもやせ細る。
「昔の人はどうやって土地の収穫を守ったのかしら」
無人で運営されている図書館、今では電子ライブラリーしか残っていないが
資料を調べてみる。

『蚕馬(さんば)伝説』を見つけた、東の大陸の話だ。
「馬と婚姻をして、蚕(カイコ)になる話なのね」
昔の人も動物との融合をしていたのだろうか?
私は蚕(カイコ)と幼虫の糸から作り出す絹に興味を持つ
今の時代は科学的に作られた繊維しか存在しない、それも自動工場で作成している。

「手作りで服を作るのは、価値が上がるかもしれない」
私は熱心に勉強を続けた、婚姻間近になっても気がつかない。

「アルマさん、私はダルシマです」
婚約者は黒い顔の大きな雄犬だ、顔の毛並みがまだらで醜い。
「アルマです、よろしくお願いします」
たしかに、誠実そうだが毛色が悪すぎる。
それでも私は夫となるダルシマと生活を共にする事にした。

数年後に私は『養蚕』に成功する、遺伝子が保存された工場から虫たちを生成すると
小さな納屋で育てる、桑の葉を与えて繭を作らせて糸を取り出す
糸は頑丈で美しく東の国の和服というデザインに似せた

はじめは興味を持たれないが、美しい彩色と着心地で人気がでると
飛ぶように売れた。私たちは成功すると工場を大きくして事業を拡大させる

「アルマもっと工場を大きくして」母親が贅沢な身なりで私に頼み込む
「そんなに大きくできないわ、桑の畑はすぐに育たないから」
横目で見ると部屋の隅で、夫のダルシマが手招きで私を呼んでいる

「俺の父親が無理な土地の強奪をはじめている」
夫は元から学者肌の人間だ、土地の風習などを調べるフィールドワーカーと
して活動をしていた、私が成功したのも夫が現地調査をして桑の畑に適した
土地を洗い出したからだ。

彼の父親は都市部での選挙に向けて、金が必要なのだろう。
無理な土地搾取が続けば、農民達の怒りが私たちの商品にも向けられる。
私は何日か考えた、結論は一つだろう
私たちが居なくなれば、養蚕の事業は拡大しない
農民達のためにも、逃げることにした

問題は私が身ごもっている事だ、逃避行が始まった。

続く


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