SS 山の上の少女【残り物には懺悔がある】#毎週ショートショートnoteの応募用
「懺悔懺悔六根清浄」
暗い山を裸足で登りながら闇の冷たさを、心地よく感じるのは罪を感じているからだ。
「いつまで飯を食ってるんだい」
「まだ言われたことができないのかい」
「グズだね、のろまな娘だよ」
奉公に出された先でいじめられた。だから逃げた。
泣きながら山を登り村に帰ろうと思ったが無理だ。戻ったところでまた奉公に出されるだけだ。
(わたしが悪いの……)
もの覚えも要領も悪いけど、見た目がかわいいので嫉妬された。理不尽だと思うけど、それが人間だ。
(心を清らかにすれば、きっと苦しまなくてすむ)
山の上のお堂で仏様にお願いするんだ、娘は疲れた足を懸命に動かして山を登る。白々と空が明るくなり、暗闇の先にお堂が見えた。
(仏様助けて……)
ドンっと大きな地鳴りがするとぐらぐらと山がゆれる、巨大な地震は山の中腹を崩すと奉公に出された屋敷を飲み込んだ。
自分だけが生き残った……涙が止まらない、罪の意識は重く、残り物には懺悔がある。