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SS 青い鳥【創作民話】
少女は怖い絵本を見る。怖いのが好きなのは怖い体験をした事が無いから。本当の恐怖を知ったらきっと怖い話を読めない。だから私は幸せ。ひとりぼっちでいつも私の回りに人は居ない。怖い話だけが私を癒やしくれる。本当の恐怖を知るまで私は怖い本を読む。
「この本も怖そうね」
表紙に笑う少年の絵が描かれている。彼はボサボサの頭で一人で笑っている。その世界に不幸せな事が存在はしない。笑う事で世界を生きていける。
「私も笑えばもっと幸せになるのかな …… 」
家族も仕事で家に居ない。学校は一人で歩いて行く。自由だけど不自由な生活で私は満足する。何をしても怒られない。でも褒められもしない。さみしいけど窮屈じゃない。誰かを助けない代わりに誰も助けてくれない。
「大人になっても同じ事をしてそう …… 」
私は絵本を開く、笑う少年の話を見る。暗い森に住んで奇怪な人物達と事件を解決する。不完全で違和感がある話は私には理解できない。少年は最後にどこかに行く道へ向かう。私は何故か満足する。ベッドに入るとすぐ眠れた。
「おい 青い鳥を探しに行くぞ」
少年が笑っている。私を見ながら笑っている。手を引っ張ると私と彼は暗い道を歩く。夢だと判るがリアルすぎる。でも誰かと手をつなぐと、味わったことが無い安心感を得た。誰かと一緒に居るだけで、こんなに違う。
「青い鳥って何?」
実は知っているけど聞いてみる
「存在しない鳥だよ 探しても見つからない 誰も信じてないからね」
私は怖くなる、青い鳥は希望だ。希望が存在しない?
「青い鳥は居るわ …… 」
自分を騙している。希望なんて無い。存在しない希望を探してどうする。所詮は生まれた時の環境だ。幸せになる奴は、何もしなくても幸せになる。
「私はもうこの夢を見たくない」
手を離すと少年は笑いながら
「ならこのまま夢の中で暮らせ」
どこかに消えてしまう。
少年の手のぬくもりが消える。つかんだ手はもう無い。大きな喪失感で私は泣いた。そして目が覚める。
「また あの夢か …… 」
タトゥーの入った腕は痩せて細い、不健康な顔で私は起きた。生あくびをしながらバイトの準備をする。青い鳥なんて居ない。私は今でも一人だ。
終わり