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SS クランプス【ジンジャークッキーイブ】#毎週ショートショートnoteの応募用

 ジンジャークッキーを手に取るとそっと噛みしめる。少女は口を動かしながら、窓から暗い夜道を見つめた。

(お父さん、遅いな……)

 今は家には誰もいない。夜勤の母は帰れないと電話をもらい、さみしくてたまらない少女は大きなクリスマスツリーを見上げる。電飾でキラキラしているのに、なぜか恐い。

(動き出しそう……)

 ツリーにはプレゼントの箱があり、赤いリボンで飾られている。欲しかった熊の人形かな?

 黒い影が箱から顔を出す、ヒッっと声を出しそうになるのを、やわらかな小さな手で口を押さえる。猫のミリーだ。

「ミリー、おどかさないで」

 お父さん遅いな、ジンジャークッキーを、皿から取ろうと手を伸ばすと何も無い、皿の上には猿がいた。

「何……」

 猿じゃない、皺だらけの皮膚をもった小さな悪魔だ。唖然あぜんとしていると悪魔はクッキーがのどにつまったのか苦しそうに暴れだしてテーブルから落ちた。

「ただいま」
「お父さん、悪魔!」
「え? プレゼントを買ったのに悪魔はひどいな」
「悪魔がいた」

 父親は娘を抱き上げると部屋を見まわすが何もない。猫が落ちたクッキーを食べている。

「クランプスかねぇ」

 今は手も皺だらけでシミもある、孫の頭をなでながらジンジャークッキーイブの昔話を聞かせた。

「悪魔なの?」
「そうだね、子供を連れ去る悪魔だよ」

 不思議で神秘的な夜話を聞かせる彼女は幸せ。

#毎週ショートショートnote
#ジンジャークッキーイブ
#ショートショート
#小説
#クリスマス

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