SS うちのメロンパンは幼なじみと仲良しになる幸せのお人形だった話【#ボケ学会のお題】
メロンパンに手足がついている。手作りのアクセサリーはお気に入りで通学カバンに大切につけていた。
「遅刻しちゃう」
いつもの曲がりかどを無意識で走り抜けると男子がいた。頭から腹に突っ込むと二人で転んでしまう。
「ごめーん」
「痛てええよ……甜芽か」
クラスの不良はリョウスケだ。
「げ!」
「げ!ってなんだよ」
幼なじみで小さい頃から知っているが中学に入ると背がでかくなる。私は背が低いので並んで歩くと小学生に勘違いされた。
「悪かった、でもあんたも悪い」
「うっせいな」
「早くしないと遅刻よ」
私はリョウスケを置いて走る。教室にすべりこむと教科書を出しながら気がついた。大事なメロンパンが無い。
(あの時か……)
放課後にリョウスケとぶつかった曲がりかどを探していると長い影が私を隠す。手にはメロンパンがぶらぶらと手足を泳がせている。
「甜芽、お前んだろ」
「あ……ありがと」
「甜芽が作ったのか」
「そうよ、あんたもこのアニメ人形が好きだったね」
二ヒヒと笑ってみせるとリョウスケの顔が夕日に照らされて赤く見えた。
「甜芽、なぁ、今度」
「なに?」
「夏休み向けのメロンパンマンの劇場版あるんだ」
「……子供向けよね」
「だからさ、一緒にいかないか」
「あんた私が小学生に見えるから誘うんでしょ」
「デートだよデート!」
初デートに子供アニメを見るのはどうかと思うが幼なじみと行くだけだ、私はメロンパンの人形を受け取った。どうせ一人で見るのがキツイから私を誘っただけだ……
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「あの、小学生一枚」
「はい、親御さんも半額になりますよ」
リョウスケは、映画代金をケチって劇場に入る。なんて姑息な男!と思ったが周囲を見ると子供だらけだ、一人で見るのは苦行と思う。
「本当にあんたって」
「甜芽、これ面白いんだぜ」
エンドロールで私は泣いていた。メロンパンマンが地球の滅亡を救うためにマグマに突っ込むところでボロボロと涙を流してしまう。
「甜芽、次もいこうぜアニメ映画」
「いいわよ、リョウスケ」
のっぽの彼と小さい私、メロンパンも手足をぶらぶらさせて嬉しそう。
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