SS アニュと貴族【人生は洗濯の連続】#毎週ショートショートnoteの応募用
アニュの顔に鋭利なナイフが近づく。
「おい、この服を洗濯しな」
「……はい」
男は血まみれの服を投げ寄こした。端正な顔の若者はクシャトリヤの戦士だ。血で興奮しているのか息が荒い。アニュは貴族の服を確かめた、裁縫が得意な彼女は王族の服も縫ったこともある。
(なんてきれいな刺繍……)
象の神様、ガーネシアが笑っている。
「おい、洗えるか」
「血の量が多くてむずかしいです」
「そうか……お気に入りだったんだ」
「大根を使いましょう!」
「大根?」
「よく落ちるんですよ」
アニュは、大根を持ってくると戦士に手をさしだす。
「そのナイフを貸してください」
「お、おぅ」
アニュは大根を迅速の技で細切れにする。
「大根と水と服をいれて、よくもみます」
もみもみもみすると血がすっかり抜けてしまった。戦士は畏敬の念をもってアニュを見る。
「上手だな」
「人生は洗濯の連続ですからね!」