SS アイニャンの冒険5 ワールドザワールド
あらすじ
迷宮世界で行方不明の女神を探すために牛鬼の領土に
侵入を試みる事にする愛娘(アイニャン)一行は、
路上で暗殺者に狙われるが撃退に成功した。
冒険者のアイから上着を借りるとそれなりに肌は隠れる
それでも足りないので体全体に毛を生やした。
体が小麦色の毛でふさふさになる
「まぁこんなもんでしょ」
「毛なみがきれいです」ヒサギが私の体に触れると
さわさわとなでる。くすぐったい
切られた腹の傷は跡形もないが体力は削られた。
壁に向かうと転移の印を描いて、急いで地下世界に戻る。
「おなかすいた」
子供達を連れて一休みする事にした。鳥居から離れると
城下の店までぶらぶら歩く。
「体は大丈夫ですか?」
冒険者のアイは私の体を心配しているが
「あんな程度じゃ死なないから」
でもこの子達なら地上まで戻れない。
飯屋につくと、肉料理やら饅頭を頼んで食いまくる
ヒサギとアイは驚いたように見てるが、体力を戻す
ために仕方が無い。
「それであんた達まだ女神を助けたいの?」
この子達の覚悟を確認したい。
子供達は即座にうなずく。
想像していたより胆力はありそうね。
「なら作戦よ」
牛鬼が居る場所は迷宮世界の最深部にあたる
【無間】の空間だろう。交易のために往来する通路は
存在するが関所もある
牛鬼達は、そこの監視もするだろうし関所を
地下世界の私と、地上世界の子供達が抜けられるわけもない
そこで採掘の縦坑だ。
そもそもそんな場所を降りようとは誰も思わない。
なにしろそこから降りたら登って戻れるわけもない
ただ私たちは転送が可能だ。
降りた場所で転送で地下世界に戻れる。
「つまり最下層までは縦坑で降りる、でもそこから
女神がどこに居るか調べる必要があるの」
私も最下層がどうなってるか知らない。
情報屋も居ないから、底にいるやつらを捕まえて
白状させるしかない。
絶望的に困難に思えた。
「俺なら女神の位置は判るかもしれないです」
アイが自信なさげに答える
「あんたは養い親の場所が判るの?」
「俺は大樹の下で捨てられていました、
他の女神達は街で養い親を探そうとしましたが
悪意(ワルワル)の女神だけは反対して育てました」
「仲良かったよね」ヒサギが懐かしそうに語る
こいつら幼なじみなのか、いいわね若いって。
「女神は俺が迷子になって困らないように、体に印を
刻みました。」左手を出すと親指の根元に奇妙な文字
が描かれている。
「これで判るの?」
「こうやって握って居る場所を探ると感じます」
アイは地面に向けて見せる
「今は何も感じません」
バイワールド側に行かないと判らないかもしれない。
「じゃあ今日は休みましょう、私の家に来て」
子供達をぞろぞろ連れて自分の部屋へ行く
小さな庭があるが大きくない、部屋が2つくらいしか
ない平屋だ。
「寝るところは1つだけよ、私とヒサギで寝るから
あんたはそうねぇ、長椅子を用意するから」
ベンチみたいな椅子をもってくると食事を作る土間に
置いた、
「あんたここね」
アイは嫌な顔もせずに椅子に座る
「大丈夫です、壊れないし寝れます」
ヒサギを壁に埋め込まれたベッドに連れて行くと
「私は奥で寝るから」
もう眠い、私はごろりと横になると眠ってしまう
夢を見た、導師様が私を叱る
『お前は、俯瞰的に物事を見ない』
『俯瞰的ってなんです?わからないです』
『視野が狭い、集中力はあるが周囲を見ない』
『敵だけ見ればいいじゃ無いですか』
『それでは誰も守れない、お前自身も』
ゆさゆさと体を揺すられる、がばっと飛び起きると
ひさぎがびっくりしている。
「なに?朝?」
外が明るい、寝過ぎた?
「食事ができました。一緒に食べましょう」
ベットのある部屋の机の上には
朝食が用意されている
アイが長椅子を持ってきて座っている。
どこから調達したのか饅頭がホカホカと湯気を出している
「ん?お金どうしたの?」
ヒサギは「市場で買ってきました」
アイは自分の貨幣をどこからかで両替したらしい
私は椅子にすわる、饅頭を手にとるとむしゃむしゃと食べる
全部食べる、案外おいしい。
「あんた作ったの?」
当惑しているヒサギがうなずく
「飯屋までいくわよ、こんな量じゃ持たないわ」
子供達を連れて外に出た。
続く