SS チェーン 【#誰かに言いたくなる恐怖体験】
用心深い方だと思っていた。その日は借り上げのマンションで入居したばかりで、みなれない部屋には違和感がある。
「ここから数ヶ月か……」
しばらくは知らない土地で暮らす事にした。布団を敷いてドアにチェーンをかけて眠る。心配だった。普段はチェーンはしない。
人間の入眠時間は、三十分くらいらしい。確かにうとうとしていたが、実は眠れない。布団で寝返りをしていたら、玄関の方でけたたましいチェーンの音がした。
聞き慣れない音は恐怖を感じる。理由がまずわからない。しばらくすると物音もしないので、ゆっくりと起きて玄関の電気をつける。
チェーンはかかっている。ドアの鍵は閉めていない。
誰かが侵入しようと勢いよくドアを開けたがチェーンの爆音で逃げてしまったらしい。ドアの鍵を忘れる失態でぞっとする。
もしチェーンがなかったらどうなっていたか、想像は出来ない。