落語 苦楽魔暗【クライマックス】ボケ学会参加枠
八さんと熊さんが昼にソバ屋を探していると坊さんが立っている。
「喝!」
「うわ、びっくりした」
「なんだ、どうした」
坊さんがいきなり怒鳴る。
「お前らには苦楽魔暗が憑いている」
「なんですかそれ?」
「どうせ金を要求するんだろ? 銭ならない」
そこだけきっぱりと八さんが自慢げに答えた。
「おい、金がないのにソバ食うのか」
「お前が持ってるだろ」
「いや俺も持ってない」
「だったら言えよ」
「お前が誘ったんだから、当然持ってるだろ」
八さんと熊さんが喧嘩を始める。
「喝!」
「いきなり大声だすなよ」
「お前らのいい加減な行いが、苦楽魔暗を呼び寄せる」
「だからその、苦楽魔暗ってなんだよ」
「金の貸し借りが当然と思う奴らに憑く魔物じゃ」
「はぁ? おいらたちは、金の貸し借りなんぞしてないよ」
「そうだよな、だいたい返さない」
「なんだと……」
ドロンと煙が舞い上がると、狸が呆然としている。
「狸じゃねえか」
「脅かして金を巻き上げる気か?」
狸はしょんぼりと
「ソバ代もないやつらを見抜けずに、金をだまし取ろうとした私が未熟でした」
狸はすたこらと逃げていく。
「狸が苦楽魔暗とか、しょうもないオチだな!」