ご免侍 八章 海賊の娘(十二話/二十五話)
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あらすじ
ご免侍の一馬は、琴音を助ける。大烏城に連れてゆく約束をした。母方の祖父の鬼山貞一と城を目指す船旅にでる。一馬が立ち寄った島は、水軍が管理していた。海賊の娘、村上栄は協力する代わりに一馬との婚姻を望んだ。海賊の港に鉄甲船が突入する。散華衆の四鬼、大瀑水竜が一馬を襲う。
十二
「なら共同で使えばいいよ」
後ろから体を抱かれる。お仙は一馬の体をまさぐるように触りながら、一馬を刺激した。
「あわわ、やめろお仙」
「遠慮しなくいいよ、今夜はあたしが慰めてあげる」
背筋が痺れるように甘く感じる。お仙が指を使い一馬の弱点を責めた。どんな時でも男は男でしかない、怒張を感じると腰が抜けそうになる。
「旦那……」
いつのまにか山賊の権三郎が、半笑いで一馬を見ていた。
「あ、どうした」
「鉄甲船に乗り移る道具を、じいさんが作りましたよ」
「乗り移る……だと」
「火薬を利用して甲板に銛を打ち込むそうです」
鬼山貞一は、ありあわせの道具で漁に使う手銛と火薬を組み合わせて、船に打ち込む槍を作った。
「あとは船乗りとあっしらが鉄甲船に向かう手はずです」
山賊の権三郎は、簡単そうに説明するが、そんなに都合よく乗り移れるのかわからない。鉄甲船二階建ての家くらいの高さがある。甲板までよじのぼれるか、ためさないといけない。
「滑車でするすると登れるそうですよ」
「そんなに簡単にいくのか」
「まずは一人だけ乗り移ればいいそうです」
周りは敵だらけになるのに、一人で倒すハメになる。
(本当に生きて帰れないかもしれない)
一馬は心の中で疑問に感じても、もっと奥深い部分で絶対に成功すると確信していた。一馬は勝てる世界を見ている。海賊の娘の村上栄が、一歩前にでると胸を叩く。
「私は船を操る」
「よろしく頼む」
みなが一馬を見る、今は生きるために彼が導く。
(本当に……いけるのだろうか)