SS 小判食え #毎週ショートショートnoteの応募用
「円が無ければ小判喰えばいいのかな……」
カネゴンは困っていた。彼はタイムスリップして江戸時代にいる。彼の食事はあくまで日本の円だ。胸のメータも¥で表示されている。
「おい、めしだ」
見世物小屋で飼われているカネゴンは、江戸時代に到着するとすぐ捕まる。
「十六文だ」
「おそば代くらいですね」
「贅沢ぬかすな、しかし銭を喰う化け物とは思わなかった」
言葉が話せるので、一般芸人達と同じ扱いで、蛇女やろくろ首を演じる人間と一緒にいる。
「まるで鍋のふただね」
「言葉わかるんだ」
彼らはカネゴンに優しくしてくれた。ただ難点がある、カネゴンの胸のメータは円表示なので、十六文くらいもらってもカウントアップしない。
「腹減った……」
一日のカロリー分の円をもらわない死んでしまう筈が平気だ。どうやらメータとは無関係に金属の質と量で決まる。
「この四文銭の銅の価値がいいのかな?」
「カネゴンよろこべ、お前を欲しがってるお大尽がいるぞ」
「お大尽?」
「金持ちだよ、お前にはぴったりの家だ」
珍しい生き物を見たい商人もいるし、お座敷で見世物にすれば余興になる。カネゴンは買われて金持ちの家にもらわれた。
「これはめずらしい、お前は銭を食うのか」
「銭ならなんでも食べます」
「藩札はどうだ」
「藩札はちょっと」
「じゃあ小判を喰わせよう」
黄金色の小判を見せられると飛び出た目が嬉しそうに動く。出された数枚の小判を食べると、その美味さに目が飛び出た。(もう出てる)
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「旦那様ー大変です、金蔵が空です」
「なんだってー」
「カネゴンが、すべて食べてしまいました」
「おのれ、お仕置きだ」
あわてて蔵にいくと、カネゴンが寝そべりながら
「もう小判はいいです、大判が怖い」
※注意 これはカネゴン落ちではありません。