SS 彼は鼻をクンクンさせて言った。「この部屋、なんかアホ臭くない?」#ストーリーの種
蒼木紅狐は鼻をクンクンさせて言った。「この部屋、なんかアホ臭くない?」
「なにそれ? 匂いなんてないわよ」
女子の部屋でいきなりクサイとかデリカシーが無さすぎる。私が傷つくことも考えられないの? 呆れて私は不機嫌になる。
「違う違う、アホ臭いんだ」
「……意味わからない」
彼は変な男だ。中学のクラスで孤立している男子と付き合う事になるのは偶然だった。
「遠崎月美と蒼木紅狐は、準備室で資料を集めてくれ」
先生がたまたま目についた私と、暇そうな蒼木君を指さすと仕事を命じる。私は古い校舎で男子と二人きりだ、やはり怖い。彼は陰気で何を考えているか判らない。顔はすっきりとしてハンサムなのに、得体がしれない。もし、いきなり襲われたら?(自意識過剰)
そんな妄想で階段を登りながら蒼木君の背中を見る。その視線を感じたかのように彼はつぶやく。
「そうだ、遠崎さんは明日は休んだ方がいいよ」
「え? 何? 」
いきなりだ、意味不明な上に電波男子だ、私は刺激しないように黙る。いきなり暴れられたら怖い。黙っている私の顔を横目に見ながら
「俺は鼻が利くんだよ」
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翌日は寝坊した。電車に乗り遅れてしまう、改札口まで走ると大勢の生徒たちが心配そうに時刻表を見ていた。
「どうしたの?」
「転覆事故だって」
クラスメイトに聞くと大事故が発生していた、多数の生徒が巻き込まれたと騒いでいる。私が通学する時間帯に事故が起きていた。
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「ねぇ、なんで事故が起きると判ったの?」
「色々あるんだよ」
蒼木君は言葉を濁す。その時は何も言わなかったが、長く付き合うと少しずつ秘密を教えてくれた。彼は狐に憑かれている、その狐の霊力で未来が判る。そんな不思議な事を言う彼に興味を持った。
「なんか臭いんだよなぁ? どこかな? 」
「やめて蒼木君、だめよ」
いきなり私の部屋を調べだす、私は恥ずかしくて蒼木君の腕をつかんでやめさせる。でも彼は私の力では止められない、いきなり四つん這いになると姿勢を低くした。
「ケーン!」
鋭い鳴き声は狐だ。ドンと天井がなるとガタガタと音がして遠のいた。蒼木君は姿勢を戻して笑う。
「野生のむじなだね、妖怪化していて君を狙ってたようだ」
私は妖怪に狙われやすいのか、その後も彼に助けられた。今は不思議な彼と一緒に居るのは退屈しない。