SS JK死神【三題噺:天空 死神 食事】
※ニコ小説枠のお題枠用
「死神ですか」
「死神です」
髪の長い女子高校生が指をつきつけてポーズを決めている。俺は、昼の食事のクリームパンを食べているサラリーマン。
「俺はもう死ぬんだ」
「そうですね、今日の夜に死にます」
「……短い人生だったな」
「運命ですから」
「質問いいですか」
「かまいませんよ」
「なんでJK」
女子高校生にからからわれているとは思えない。この年頃は俺くらいの男を嫌うのは定番だ。もしかしたら新しいパパ活?
「不気味な格好で出たらびっくりしてあなたが死ぬでしょ?」
「死ぬんだから別にいいだろ」
「死ぬ時間が決まってるんだからダメ」
JK死神は真面目だ。
「じゃあ俺はもう仕事に戻るよ」
「なんでよ、もう好きな事をすればいいじゃない」
「仕事ってのはな、大事なんだよ」
格好つけて会社に戻るが別にいそがしくない。よくわからんデータでグラフを作るだけだ。
「どうせ死ぬなら、隣の坂木さんにプロポーズでもするかな」
生真面目な坂木さんは、まだ独り身だ。できる女性すぎて男が寄ってこない。俺は、意を決して彼女の席に行くと
「結婚してください」
手を差し出す。
あっけにとられた坂木さんが、黙ってからの怒りの叱責がすごかった。冗談の上にセクハラだと俺を糾弾する。
「すいません、会社辞めます」
なんか死ぬと判ったらもう恥とかどうでもよくなった。仕事もそのままで外に出る。JK死神がまっている。
「やっぱり仕事なんてどうでもいいですよね」
「うん、まぁどうでもいいな」
「じゃあ部屋で大人しくしててください」
「なんでよ」
「部屋で心臓発作で死ぬんですよ」
「そうか独り身だから、誰にも介抱されずに死ぬんだ」
「あなたが死ぬとポイントをもらえるんです」
「俺は一ポイントなんだ」
「いえ凡人なんで0.5ポイント」
俺はがっかりしながら部屋に戻って、たまってるアニメの録画を見る事にする。最後は好きな事をして死のう。しばらくすると玄関でチャイムが鳴る。
「坂木さん……」
「会社辞めるの?」
「俺はもう死ぬらしいので、どうでもいいです」
「ちょっと上がるわよ」
コンビニ袋を持った坂木さんは、酒を出すと俺に飲ませた。延々と説教して愚痴を言ってぐでんぐでんなる。
「若いんだから死ぬなよ小僧」
「小僧じゃないですよ、坂木さん」
酔った勢いで彼女とベッドで愛し合ってしまう。眠っている彼女の顔を見ているとJK死神が現れた。
「何しているんですか、死ぬ時に」
(静かにしろ、坂木さんは眠ってる、今は天空を飛ぶような最高の気分だ)
「もう時間ですよ」
俺は心臓が苦しくなる、寿命が来た。俺は幸せのまま死ねる。でも心臓発作はめっちゃ苦しい、もだえ苦しんでいると坂木さんが起き上がり介抱してくれた。
xxx
それからJK死神に取り憑かれた。俺は生命保険に加入して妻に遺産を残す事にしている。やさしい坂木さんを妻にできただけで俺は十分幸せだ。
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