【掌編小説】リレー小説⑤(これってひよこの挑戦状?)#電車にゆられて(Love the PTA Toshi Inuzukaからの続きで)
暗いトンネルを走っている最中は、車内に薄暗い電灯がついている。車掌が、ゆっくりと後方の車掌室の車両に向かう。
たまにゴトゴトと音がするくらいで静まりかえった車内には、六割くらいの客がいるのに話し声も無い。列車の天井を見ると古くさい水色の扇風機が回転している。
「あんた、弁当を買ったのか?」
通路をはさんだ横の席の男が俺に声をかけたきた。
「いや弁当は買ってない」
「そうかぁ、ここの駅弁はおいしいよ」
それだけ言うとまた食べ始める。しばらく見ていると延々と食べ続けているのに、飯もおかずも減っていない。
「なぁ、その駅弁……」
だが声をかけても聞こえないのか無心に食べ続けていた。しばらくすると腹部が異様にふくれあがる。見る間に、どんどんと大きくなる。それでも食べ続けている男を見て俺は席を変える事にした。
「なんなんだ……」
列車の通路を歩くと様々な人間が座っていた。体のどこかが欠けている客や、それどころか頭部が無い客まで居る。
(ここは死んだ人間が乗る列車なのか)
空いている席を探しながら先に進むと、手首をつかまれた。
「この席に座りな」
ガラの悪そうな坊主頭の男が俺をつかんで離さない。
「別の席にしますから……」
「もうすぐ終着駅だよ」
「はぁ……」
席は進行方向に向かって二人がけの座席だ。坊主は通路側に座っていた。俺は自然と窓側に座る。
「この列車は、なんですか」
「そうだな、人は死んでも意識があるらしい」
「心臓が止まってもですか」
「血流が止まっても、シナプスは動き続けている」
「なるほど、今は夢を見ている感じかな」
「さあな、俺は俺だし、お前はお前だ。もし夢ならなぜ同じ列車に乗った夢を見る」
俺にも判らない……、その後は黙って窓を見るがトンネルの中だ。陰鬱な顔の俺が窓に映って見える。しかし坊主頭の男が見えない。
ふりむくと誰も座っていない。席を立った様子もないが、俺は気にしないで窓を見る。トンネルから抜けそうなのか、進行方向が明るく光って見えた。
どこかで重く鈍い音が響いている。トンネルの先は赤黒い光が見える。俺は記憶がないまま、見知らぬ土地に降りようとしていた。
ひよこ師匠さんが記憶喪失の男性を列車に乗せて
日出詩歌さんが水車の前で女性を出演させ
WSDが奇怪な世界を作り
Love the PTA Toshi Inuzukaさんがトンネルの中に……
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