SS 新説なピン札 #毎週ショートショートnoteの応募用
「出番だよ」
楽屋に声がかかる、手品師はよっこいしょと立ち上がる。そろそろ引退だ。ネタも古い。
「手品師のマギー天和です」
(パチパチパチ)
「いやー最近は不景気でお金がない!、そんな時は、このアイテム商品があります」
小型の印刷機を見せる。
「このアイテム、とても便利でポケットに収まる。もしお金が必要な時は、ここをくるくると回すと、あら不思議、お札がでてきます」
(観客がうなずく)
「このお札がまた不思議で新設なピン札、額面を手でこすると金額がどんどん大きくなる」
(観客席で笑い声)
「こうすると千円から一万円、一万円から十万円、いくらでもお金が大きくなる」
(使えないぞとヤジが飛ぶ)
「いえいえ、とんでもない。ちゃんと銀行で両替ができます。ここにちゃんと、日本銀行券と書いてあります」
(笑い声)
「この機械が今はなんと一億円、一億円でおゆずりします。まずは一億円を私に払えば、すぐに元手を取り戻せる」
ぺこりと頭を下げると手品師が下座に歩く。
(拍手)
楽屋に戻って座るとスーツ姿の男が立っている。
「何か用かい?」
「その機械を買い取りたいのです」
「手品屋で五千円で売ってるよ」
「その手品のグッズを作った人が、国立印刷局の職人で趣味で作ったらしく、本物を印刷してます」
「ははは、そんな馬鹿な……でも判った五千円くれれば、あんたに渡すよ」
「ありがとうございます」
スーツ姿の男が帰った後に急いで銀行に走る、さっき作ったお札の額面を五兆円にして……
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?