ご免侍 七章 鬼切り（十一話／二十五話）
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あらすじ
ご免侍の一馬は、琴音を助ける。大烏城に連れてゆく約束をした。祖父の藤原一龍斎は、一馬を刀鍛治の鬼山貞一に会わせる。貞一の娘が母親だった。そして母は殺されていた。鬼山貞一から、母は生け贄にされたことを知る。生け贄の場所は大烏城だった。
十一
力なく立っている藤原一龍斎が、ゆっくりと露命臥竜に近づく。
「おぬしたちの目的はなんだ……」
「……」
露命臥竜は、正眼に構えると同じく一龍斎に、近づく。
（後ろから）
一馬は、鬼切りを握りしめて突っ込もうとした瞬間に、露命月華が叫んだ。
「止まれ」
鋭い声は高く、一馬は反射的に体を後ろに下げた。その鼻先に露命臥竜の刃が触れるように空気を斬る。もう数歩進んでいたら頭が割られていた。
臥竜の体は、一龍斎を向いたままなのに肩関節が異様に柔らかいのか、ありえない方向に刃を向ける。
臥竜の刀身は、そのまま一龍斎を斬りつける。ふらりふらりと揺れるような老人の体に刃が食い込む瞬間に、一龍斎は、臥竜の刀をたたき折る。
「お爺々様」
二刀を持った臥竜が左手の刀で、老人の腹を刺してふりむく。
ドンッ
大きな音がすると火縄の白い煙が舞い上がる。その後はもう混乱でわからない、気がついた時には琴音が連れ去られていた。
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「一馬……」
「はい……」
「生きよ……」
体が震える、だが心のどこかは冷静だ。琴音が連れ去られた、追わなければと体を動かす。
一龍斎は、山奥の湯治場で横たわる。すでに息がないのは明白だ、やるべき事はやるために立ち上がる。
「月華」
「……何」
「隠れ家は、このあたりにあるか」
「知らない……」
少女の肩に両手をかける。おびえたような少女を直視する。
「どこに向かうか判るか」
「……わかんないよ」
いつもの月華とは思えない、悲しげに老人を見ている少女は、心から泣いていた。
「旦那、弾は当たってます」
「本当か」
権三郎は、一馬に露命臥竜に傷を与えた事を知らせる。
