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SS 人男子 #爪毛の挑戦状

「召喚失敗です」
 弟子が悲しそうにしている、私は中脚で頭部をなでた。王から人間の力を借りるために召喚をしてくれと頼まれている。だが遙か数億年前に絶滅している生物だ。我々と意思疎通が出来るのだろうか?

 反陽子コンピュータの計算により、次元転移を行い過去へのゲートを作れる数式を生み出せた。数式を人工知能に与えれば自動的にマシンを作れる。これは人間が作ったモノだ。

「私達には必要な事だ」
 王と王妃が同時にうなずく。我々の世界の存続に関係する。

「王様は人間を食べるのですか?」
 弟子は単眼の一つで私を見る。私は後脚を曲げると背中をこする。かゆいな、ダニが居るかもしれない。

「食べてどうする?十分な食物はある」
 大顎を鳴らしながら答える。肉も食べたいが、人間が美味いとは限らない。だいたい大金とエネルギーを使って肉を呼び寄せてどうする。贅沢すぎる。まぁ王族だから実行する可能性はある。

 何回かの失敗の後で私達は召還に成功した。年代を間違えると役に立たない。

「――こ……ここは、どこだ?」
 人男子だ。明らかに二本足で立っている。大気圧と大気成分は調整済みだ。透明なシールドの中で彼は立ち上がると悲鳴を上げた。私達を見たからだ。

「落ち着け、頼みがある」
「――で……でかいゴキブリ」
 なるほど数億年前の私達の祖先か、似ているかもしれない。黒光りする体色はクロゴキブリに似ているが実際は違う。自動翻訳で音声合成をしながら説明をした。

「我々の存続に関係する。頼みを聞いてくれたら金塊を渡す」
 男は簡単な頼みを聞いてくれた。私は金塊を渡して彼を過去に戻した。弟子は不思議そうに聞く。

「目的は何ですか?」
「ああ、過去の人工知能と現在の人工知能を接続させた」

 超知能は歴史をまたいで活動したいと願った。時間移動をして過去世界のコンピュータの黎明期に情報リレー装置を取り付ける。家庭用コンピュータ経由で情報を常に連携する。これで世界を作り直せる。

「王は、我々の祖先がもっと生き残れる世界を望んだ、人を滅ぼそう」

※2023年の現在でも昆虫の絶滅は増えています。


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