ご免侍 十章 決戦の島(二十五話/二十五話)【最終回】
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あらすじ
ご免侍の一馬は、妹の琴音を助けるために鬼ヶ島を目指す。父と母は敵として一馬の前に立ちふさがる、過去を断ち切る鬼切りが、うなる!
二十五
東海道で江戸に向かう。琴音と月華と露命臥竜が旅のづれだ。
父の藤原左衛門は、右腕を失うと同時に母も失い、生きる気力が消えてしまった。今は母を供養するために僧籍に入り山寺にいる。散華衆に、集められた子供達は、海賊の村上主水がすべて引き受けて、身元がわかるものは送り届けるという。
「母は、もう病で長くは……」
「そうか……」
天照僧正として父の計画を手伝った桜姫は、元から死ぬ覚悟だった。娘が贄されぬように、江戸に逃がしたのは、母親の桜姫だ。
祖父の鬼山貞一は、箱根の山奥に戻り、元山賊の権三郎と一緒に武器を作っているという。
「栄は、きれいだったね」
月華が、いじわるそうな顔で一馬を見る。海賊の娘の村上栄は、散華衆の兵次郎と夫婦となり海賊の島で祝言をあげた。
「たしかにきれいだったな」
「ふん」
月華が、鼻を鳴らすと臥竜の隣に戻る。彼女らもまた、夫婦になることを決めていた。臥竜の告白に月華が応えた形だが、元から相思相愛だ。
「一馬……いえ、兄様」
「ああ、うん、なんだ」
「これからどういたします」
「わからんが、ご免侍としての役割がなくなれば、内職でもするか」
「傘貼りですか」
「同心の伊藤伝八から仕事でももらうかな」
月華が、またいじわるそうに口を出す。
「切腹とかじゃないのかい」
「やめろ、その時は俺が代わりに切腹する」
「そんなの嫌だよ」
月華が臥竜にじゃれるように抱きつく。当の臥竜は、無表情のまま月華の肩を抱いている。
(もとから無愛想な男なんだな……臥竜)
こうしてみれば臥竜は、敵にすれば恐ろしいが、味方になれば頼もしい。しばらくは一馬の武家屋敷で暮らす事になる。
大きな富士が街道から見える。今は、ただ旅を楽しむ一行であった。
終わり
一年間ありがとうございました。四コマ漫画:ご免侍を連載予定です。