
SS 濃い愛 【#感情の濃度】#青ブラ文学部(700文字くらい)
「…………」
感情の濃度が最高潮の時は声は出ない。ゆっくりと目の前が暗くなり、ナイフで突き殺す。ふいに目の前が明るくなると彼は死んでいた。
「大好きなのに!」
xxx
「好きです」
「……ああ、うん……」
バイト先の休憩室でくつろいでいた彼は驚いた顔をする。とてもかわいい顔で、私は見つめているだけで幸せに感じた。彼が驚いたのは無理もない。年齢が離れているが、かまわない。それからはずっと彼のために尽くした。尽す、言葉で言えば簡単だが、心を込めないといけない。
「おなかすいた?」
「そうだね。空いたかな……」
「疲れてる?」
「ちょっとだるいかな……」
「何か欲しいものはある!」
「あー雑誌を買わないと……」
彼の好み、彼の体調、彼の精神状態、私はすべてを理解している。私の恋は、とてもとても濃い。恋と濃い、似てるわ🧡。でも彼はとまどうばかりで混乱している。だって私は、すべて理解している。なんでも判る。彼は私が嫌いなんだ!
「なんで判らないの!」
「え? いやだって……」
「これだけ尽くしているのに」
「ちょっと落ち着いてください」
「私たちは恋人同士でしょ!」
「それは……」
言わせない、彼が言いたい事は、お見通し。失った恋は無くなってしまえばいいわ!
xxx
「痴情のもつれですかね?」
「うーん、どうなのかな……」
身長が190センチある筋肉質の男が泣いている。純愛を受けとってもらえない『彼』は悲劇のヒロイン……
