SS 【#永久欠番のあなたへ】#青ブラ文学部(550文字くらい)
書類仕事がたまり疲れていた時にピコンとPCが鳴る。
「ん? メールか?」
【永久欠番のあなたへ】と書かれたメールが来た。イタズラじゃないようだ。メールに添付されたファイルを解凍するとドキュメントが表示される。
「業務連絡です、あなたは永久欠番になりました、ただちに社内から退社してください」
(……退職の強要か? 意味がわからん)
メールを印刷して上司に見せた。
「ああ、永久欠番制度が始まったんだよ」
「なんすかそれ?」
「国民の一定数が、永久欠番扱いになり国外退去になる」
「意味わからんすよ」
「国会で決まっただろ? 運が悪いだけだ」
「あり得ないでしょ」
「法律だからな、引き継ぎなしでいいよ」
席に戻ると別の社員が俺のPCを片付けている。思考停止したまま、アパートに戻ると大家がいた。
「あんたの荷物は実家に送るよ、あんたはそのまま役所にいきな」
手に一枚のA4用紙を渡される。用紙には「火星移住計画参加者案内」と書かれていた。
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火星の薄い大気でも、青空と夕焼けが見える。地球から永久欠番された俺は火星で働いている。
「こっちの方が楽だな」
白夜のような薄暗い日中に野菜を育てて、空気を作りながら開拓者として働いて俺は火星で死ぬ。選ばれた女性と結婚をして子孫を増やす。俺は土を耕しながら、ストレスもなく幸せに包まれていた。
「今日は火星ジャガイモのスープかな」
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