SS スナイパーの意外な使い方#毎週ショートショートnoteの応募用
俺は五六五十三、今日は特別な仕事があると頼まれている。芸能プロダクションのビルの一室には成人したばかりの青年が六人ばかり立っていた。
「用件はなんだ? 」
入ったドアから離れずに壁を背にして立つ。椅子を勧められたが断った。
「前回のように狙撃をしてもらいたい」
俺は黙ってうなずく、懐から拳銃を取り出すと注意された。
「すまん、禁煙なんだ」
最近は煙草を吸えない場所が多すぎる、拳銃型のライターをしまう。
「はい、一番目です、コンビ名は花丸うどんです! 」
青年は売り出し中の若手芸人だ、それぞれがネタを出す。俺は黙って聞いている。お笑いは観客の動向も見るが、客になる俺は黙って立っているだけだ。
受けているのか判らない状況で、すべてのネタを聞くと俺はそれぞれのコンビにダメ出しをする。
「まずネタが古く、途中でだれる! 」
六人全員をピンポイントで急所に当てる。悶絶するように彼らは床にはいつくばる。狙撃は成功だ。俺はお笑いにも厳しい。
「これでいいのか?」
「最高の批評だよ、これがスナイパーの意外な使い方だ」
にやりと笑うプロデューサーは俺よりも酷薄に感じた。