ご免侍 二章 月と蝙蝠(二十一話/三十話)
あらすじ
銀色の蝙蝠が江戸の町にあらわれる。岡っ引き達が襲われていた。芸者のお月が一馬に傷を負わせる。
「小松家の由次郎の件ですか」
「江戸の街も物騒でな、人さらいや薬で人が死んでいる」
祖父の一龍斎が、少しだけ遠い目をする。天井を見ていると、いきなり懐から棒手裏剣を出すと天井に向かって突き刺した。どん!と音がすると、ガタガタと天井がゆれて誰かが逃げたした。
「まさか間者ですか……」
「どこぞの忍びが入り込んでいるな、屋根裏に侵入される場所は作らなかった筈だが」
立ち上がると廊下の障子を開ける、そこには琴音が座っていた。
「何も心配いらぬ」
それだけ言うと一龍斎は、廊下を歩いて行く。後に残った琴音が立ち上がると一馬は近寄る。
「俺が城まで案内する」
「私が甘えすぎていました」
「一人で旅するつもりか」
「やってみます」
東海道を歩いて西の国まで旅をする苦労を判っているとは思えない。一馬は琴音の右手を握ると両手で包む。
「頼む、無茶はするな」
「……どうしてそこまで……」
琴音は悲しそうに戸惑うように一馬を見る、一馬は目をつむると息を深く吐き出す。
「俺の性分だ、誰かが不幸になりそうならば、助けるだけだ」
目を開いてしっかりと琴音の顔を見る。琴音は、やわらかく笑うだけだった。
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