![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/151709536/rectangle_large_type_2_8f1276c775bb91716aeca5e6986c3b86.jpeg?width=1200)
ご免侍 九章 届かぬ想い(二十話/二十五話)
設定 第一章 第二章 第三章 第四章 第五章 第六章 第七章 第八章 第九章
前話 次話
あらすじ
ご免侍の一馬の父が、散華衆の隠形鬼だと暴露された。一馬は、連れさられた琴音を助けられるのか。大烏元目に会う一馬は、琴音そっくりの城主と対面する。天照僧正を倒すために城へ乗り込む準備が始まる。
二十
朝になると大烏元目から使わされた侍が到着する。
「散華衆の里に入るための割符を作りました」
木片は奇妙なギザギザした形に加工されている。一枚の板を切って、また一つの板に戻るならば正式な割符だと判る。
「これで女が三人行くと伝えてあります」
「わかった……女」
「そうです、あたらしい女を用意したので修行させる名目です」
「……わかった、俺の背丈にあう着物を用意してくれ」
月華と栄がクスクス笑っている。なにしろ男が女に化けるのだ、太った女にした。
「背が高い女だね」
「相撲取りみたいだね」
二人は楽しそうに一馬に着物を着せると腹がでているように帯を太く巻いた。化粧をして顔を真っ白にする。
「いい女だよ」
「かわいい、かわいい」
すっかり人形扱いだが、これで刀を差すと確かに帯刀した女相撲取りに見えなくも無い。旅姿の女三人が山道を歩いて、散華衆の里に向かう。
「どんな所なんだ」
「お城の中だよ」
男は剣術を教えて、女も影忍なれるなら修行させた。他の子供達は単純労働や盗み窃盗のたぐいの技術を教え込まれ夜盗として活動する。
「ひどいところだな」
「子供だからね、教えられたら悪いと思わない」
城下町から山を一つ越えた場所に散華衆の里があった。近くにあるのは子供達を登城させるためだろう。城壁は黒く大烏城と呼ばれる理由がわかる。古い城を改修したのか難攻不落に見える立派な城だ。
巨大な門の所に来ると、まだ幼い顔つきの若い男が槍をもって門番をしている。
「どこのものだ」
「割符です」
門番が割符を確かめると切戸から城内に入れた。中に入るとずらりと兵が並んでいる。
「藤原一馬、お前を捕らえよと大烏元目様から命が下された」
![](https://assets.st-note.com/img/1724410242603-ldCr5zW6Bp.jpg?width=1200)