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ご免侍 一章 赤地蔵(十話/三十話)
あらすじ 一馬は侍と医者の暗殺を頼まれる。
土手下の男達は、一馬をにらみつけた。彼らはあわてずに、二人が土手をあがる。町人のようには見えない。鍛錬された体つきは侍にも感じるが、明らかに動きが違う。
「やめとけ」
一馬の言葉が終わる前に腰の刀を抜いた男達は、左右に分かれて猛然と踏み込む。一馬は脇差しを抜いて腕をたらした。
「うむ!!」
一馬は、体を落とすとひねるように土手に飛び上がり男の背後に回りこむと太ももを切り上げた。変則的な剣術は、見たこともない剣筋を生み出す。男は倒れ込み足をおさえる。
立ち上がった一馬は、切り込んできた男の腕を切り裂く。
切られた二人の男がうめいているが叫ばない。声を出さないように訓練されていた。一馬が土手をすべるようにまた降りる。
残りは二人、頭領らしい男が女の喉を腕でしめ上げる。苦痛にゆがむ女の顔を見せつけた。
「下がれ」
「お前達は、その女が目的だ。殺すわけが無い」
一馬は、相手の力量を考えた。頭領らしい男が女を捕らえている。もう一人は使い手だが、自分よりも弱いと踏んだ。一対一なら勝てる。
相手がいきなり女を突き飛ばすと一馬の方に女がよろよろと倒れ込む。敵は女を囮にして、一馬を殺す気だった。
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