どろぼう★猫の二次創作『くもの糸(後編)』
一晩登ったか、二晩登ったか・・・四晩か、五晩か・・・数え切れぬほどの高みを目指すその行為は、それ自体が贖罪としての意味を持ったと、言えるのか言えないのか。言えないとも言い切れないが、それで十分だとは大日如来様は元より閻魔それからあのくもでさえ、言わないだろう。だが、カンダタは馬鹿だからそんなことは何も考えない。彼の脳裏に浮かんだのは、おれが登っても登っても到達できぬ高みならば、それは天国と考えて間違いあるまい、とこういう考えだった。
さてそんな彼の耳に不快な雑音が聞こえ始める。わいわい、がやがや・・・。ハッと気づいた彼が下を見下ろすと、どうしようもない連中・・・『UZOU★MUZOU』が、彼に続けとばかりに天国への道をひたすら登ってきているではないか。ただその連中が彼と違っているのは、なんだか楽しそうなことだった。先駆者たる彼は、孤独な戦いを続けていたのに、後に続く者たちは(天国に続く道という)判断を彼にゆだねてしまい、もしそれが間違っていようものなら彼に対して苦情を言いかねないぐらいの・・・無責任かつ気楽なご様子で。
カンダタは元来が寛容な性格ではなかったので、『下』に向かって怒鳴り散らした。「てめえらは登るんじゃねえ!この糸を見つけたのはこの俺様だ!!おめえらが登ってもし糸が切れたなら、てめえらが責任取ってくれるってのか?!」
その途端、糸が・・・切れませんでした、はい。天国ではあのくもが、顔を真っ赤にして大日如来様に食って掛かっておりました。
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