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オバハン矯正日記4 余命

いよいよ無料コンサル当日。
ウワサによれば相談だけでも診察代を取る歯医者もあるようだ。
ここはオープン間もないので無料サービスなんだろうか。

フカフカの椅子に座って
オバハン衛生士と
オバハン歯科医に囲まれ
口の中を見てもらう。

この台のフカフカさだけでも
選んだ甲斐があるというもの。
クソ寒い中、オバハンにとって
お尻まで冷える椅子など論外である。

フカフカのくせに
異様に倒れるのが遅い椅子にもたれていると
自称「繊細さん」の私は
脳の予測する
スピード感との違いに
歯医者の椅子で酔いそうになる。
あかん、目が回る。

「親不知が生えてきてますね」
「でも虫歯はなさそうです」

矯正の説明を聞きに来たはずが
お年頃なのか
歯周ポケットの説明の方がはるかに長い。

ついでに歯と歯茎の間を
爪楊枝のようなもので
グリグリされ
それをまたオバハン衛生士が
タブレットに記録していく。

血の味がする水でうがいをしていると
やたら分厚い(いい紙の)
料金表を手渡される。
このあたりもエステサロンっぽい。

・・・!
あっさり見積もりで
3ケタ万円を突破。

料金表の
桁が多すぎて一瞬数えられない。

3ケタ万が並ぶ通貨など
輸出入書類のウオンかルピーでしか
お目に掛かったことがない庶民である。

これって…
カードで払うの?
限度額は大丈夫か?
現金を持参するのか?
一気にそんなに下せるのか?

他に方法があるのか?
あ、もしかしてローン?
歯でローン???

いっぱしの資産だな
確定申告控除あるの?
医療費?

無理なら記事でも書くかぁ
需要あるのかな

…口を開けながら
気になるのは
歯の内容よりも
ただただ支払い額である。
我ながら情けない。

「まあ、3年はかかると思っていてください」

え?

そもそも
口を閉じた上品な死に顔が目標である。
つまりあと3年は死ねなくなったのである。

せめて人生を楽しもうではないか。

一応今のところ
年なりに(歯以外)健康である。


つづく

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