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オッドタクシーのラストを考える


<注意事項>
・ネタバレ注意です。ネタバレ全開です。
・前半は感想文です。
・他の人の考察をほぼ見ていないので、もしかしたら重複してたり、なんなら下位互換だったりするかもしれませんが、そのへんはご容赦くださいな。

では、前置きはこのへんにして、本編に行きましょう。

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オッドタクシー最終話(13話)放送から1週間経ちました。
最終回は、まさに文字通り目が離せない展開でしたね~。

もしかすると小戸川の病が治って世界が姿を変えたのは、大方の予想通りであったかもしれません。

それでもなお、あの愛くるしいキャラクターたちが、実際はどんな姿だったのか?という「怒涛の答え合わせ」の面白さは、しっかりと想像を超えてきてくれました。

「え、あんな姿だったの!?」
「うわ、あんまり変わらんwww」
「思ってたのと違う、でもわかる!」

タネも仕掛けも分かっていても、ビジュアル面は想像しか出来なかったわけですからね。むしろこのオチを予想していたほうが楽しかった、まであるかもしれません。

感情を大きく揺さぶらせる仕組みとしては、大成功だったと思います。


ギリギリ許せた人間化表現

……まあ、僕みたいなケモナーには当然ガッカリ展開ではあるんですが。
「元々人間だった」という設定は、早い段階から予期してさえいれば意外と耐えられる、ってのは一つの学びでしたね。

また、『美女と野獣』のように、獣人の姿であることが<悪しきもの>として描かれていたわけではない、というのも個人的に許容できたポイントです。

人が獣人に見えたのは、小戸川の脳が防衛反応でやった事でした。
心の傷を負った小戸川が、人間社会を生きていくために。

過去の不幸から救い出されたことを象徴するかのように視覚が戻りこそしたものの、獣人の姿そのものは小戸川にとって必要なことだった。
僕は、そう解釈しています。

<余談>
「一般人向け作品(notケモナー向け作品)」であることも許せた一因としては、あります。いくら人間化に自分が失望したといっても
ケモナーが勝手に盛り上がって勝手にガッカリしてるだけですからね。ハナっから、そういう作品ではなかった。「ケモノジャンル」と言えばマイナーだけど、「どうぶつジャンル」といえば一般向けなわけで、オッドタクシーは後者だった、ただそれだけのこと。
個人的には見た目のキャラ萌え要素で+100点の作品だったのが+20点くらいまで減っちゃいましたが、まあOKの範囲内です。
僕はこういう大規模な叙述トリック(※)が大好きってのもあって、普通に一般向け作品としてめちゃめちゃ楽しい作品だと今は認識しています。

ケモナー向け作品の顔をしながら主役を人間化しやがったソラトロボはまだ許してないからな?

(※)叙述トリック … 
巧みな表現で読者に設定を誤解させ、話のラストで誤解を正すことで、まったく違う話に変貌する面白さを狙った手法。
途中でバレると、普通は面白さが半減する。
     


で、あのラストは何なのよ

全てのキャラクターの物語が幕を下ろしてゆき、
全てのパズルのピースがハマろうかというところで
最後に残ったピースが全てを壊さんとばかりに牙を剥く。

物語はそこで終わっています。
これは「あえて完結しないタイプの完結」でしょうね。
まさか、ここにきて<恐怖>に感情が揺さぶられるとは予想外でした。
なるほど確かに今までのオーディオドラマも含めればホラー要素はありましたけれど。
作品全体を見れば、スリリングではあるものの、決して恐怖感情がメインのホラー作品というわけではなかったはずです。
でもラストだけ見たら、完全にホラー作品の構成ですよね??

僕自身はホラー映画とか滅多に見ないんですけど、その範囲内で言えば、
まあものの見事に登場人物が救われない話が多いです。
恐怖の元凶(貞子とか)は、ラスト直前で一旦取り除かれたかのように見せて、ところがどっこい人の手に負えるものではないことが判明し、
さらなる惨劇を予感させ恐怖が最高潮に達したところで終劇!
続きはモチロンご想像の通り、キャー怖い!
…って寸法なわけです。

一方、オッドタクシーのラストでは。
女子高生殺人事件は二階堂が容疑者ということで逮捕され、
死体遺棄で悪役たちが一斉逮捕。
犯人も最後に登場しますが、最初は上機嫌で、
オープニング曲まで流れ出して、このまま終わりか?
と思わせてから、まさかの小戸川タクシー行き!キャー怖い!

オッドタクシーのラストと同じ構造になっております(笑)

じゃあオッドタクシーはホラー作品なのか??
というと、そんなことはないぞ!と僕は考えます。
なぜなら、作品全体を通して繰り返し描かれる表現(おそらくテーマ)があり、それは<恐怖>ではないからです。


オッドタクシーは、【沈める者】【沈む者】【すくわれる者】【すくう者】による因果応報の物語である

いきなり結論から書きました。
何のこっちゃ、って思われるでしょうか?

ここから先は、自分の考えを整理する意味で、
作中で描かれた話を僕の解釈でまとめてみようと思います。

そのために、まず4つのポジションについて説明しますね。

【沈める者】
この作品では、多くのものが水に沈みます。あるいは、人生そのものが沈みます。沈める者は、だいたい沈めたものに相応しい報いを受けます。

死体を沈めた二階堂、山本、矢野、関口は逮捕。
家族を自分もろとも海に沈め心中を図った(と見られる)小戸川母は死亡。
田中のスマホを沈めた小戸川は恨みを買い、銃で脅しを受ける。
自分を風呂に沈め続けた市村はアイドルとして苦境に立ち続けています。

結婚指輪を川に沈めた柿花は特殊ケースで、すぐさま自らの手で掬い出したため、それから特別な報いは受けていません。

【沈む者】【すくわれる者】
沈める者がいれば、沈む者もいます。
そして、沈んだ者は、良い行いをしていれば、程度に応じて何らかの形で「すくわれ」ます。
なので、この2つのポジションは重複するケースが多いです。

少年時代に海に沈んだ小戸川は、海から掬われました。でも、救われてはいませんでした。
殺された後に海に沈められた三矢も同様、海から掬われましたが、死んでいるので救われていません。
溝(どぶ)に沈んだスマホは、堕ちて沈んだ田中のメタファーであり、彼もまた沈んでいると言えるでしょう。
(後に、ドブ(=ditch-11)に田中自身の人生が沈められた事が判明。)

最終話で再び海に沈んだ小戸川は、再び海から掬われ、同時に救われました。それは、小戸川が今までたくさん救ってきたからですね。

【すくう者】
救う者は、救われます。
あるいは、救われた者が、救います。

一番わかり易いのは、白川さんを救おうとした小戸川が、
白川さんに救われたエピソードでしょうか。

小戸川が危険を冒してまで今井を救おうと奔走した一面についても、
最終話で多額の謝礼という形で報われる事になります。

黒田は人を苦しめもしたが、多くの交通遺児を救ってきたため、
ラストではその一点において、小戸川から大金と感謝の言葉を受けとり、報われる形になります。

【因果応報】
何度か作中で繰り返し匂わせられた法則です。

「あいつ友人なんだ、柿花。
 もちろんどうしようもない馬鹿だよ。柿花が悪い。
 でもそれなりの報いは受けたはずだ。じゃ、そっちはどうだ。それなりの報いは受けたか」

「金は元の持ち主に返す。ツケが回ってきたんだよ。因果応報って奴。お前とはここでお別れだ」

オッドタクシーは誰しもが因果応報になるよう、入念に組み立てられた物語なわけですね。
キャラクターたち一人ひとりの物語に着目すれば、ほとんどが因果応報の法則で出来ている事に気付くでしょう。

残ったパズルのピース


因果応報の法則で考えると、最終回を経ても
「まだ法則満たしてない奴いるじゃん!」
というキャラがいることに気づきます。

①和田垣
【沈める者】の代表格で、言うまでもなく作中最大の大罪人。
最低でも逮捕されて夢が破れないと、報いを受けた事になりません。

②大門弟
兄に騙され、警察に所属しながら悪に加担してしまっていた大門弟は、
事件を通じて小戸川に救われる形になりました。【すくわれる者】です。
彼が小戸川を救うシーンが、まだ足りてないと思いませんか?

③二階堂
【沈みすぎてしまっている者】とでも言うべきでしょうか。殺人容疑をかけられていますが、当然そこまでの罪はありません。
死体を捨てた件についても、それを出来てしまう大人が周囲にいなければ
そんなことをする発想には至らなかったでしょう。
殺人事件さえ無ければ普通に売れてた可能性も高いため、被害者寄りの加害者です。死体遺棄はともかく、因果応報の法則で考えれば殺人容疑は晴れるはずです。

④柿花
代表的な【すくわれた者】。矢野に捕まってしまった柿花は小戸川に救われました。まあ、小戸川の貴重な友人だった…という意味では小戸川を救ってきた側面も決して小さくはなかったのでしょうが、それはお互い様のはず。
救うシーンが、まだ足りてない気もします。


これらを踏まえた、ラストシーンの後の展開予測

和田垣→逮捕
大門弟→小戸川を救う
二階堂→殺人の疑いが晴れる

の3つのピースの組み合わせると、もう大門弟が小戸川を救って和田垣を逮捕して二階堂の疑いが晴れる展開しか見えません。

これに柿花がどう絡むのかは未知数ですが(笑)
小戸川が負傷して、それを助けるとか……?

そういえば、伏線っぽいセリフも作中にあるんですよね。
病院での小戸川の一言。
「それで思い出した事があるんだ。
 俺が10月4日、深夜にミステリーキッスの事務所まで乗せた子…
 あ、いや警察で話せばいいか…」

この後、作中に小戸川が警察で話したシーンはありませんが、
わざわざこんなセリフを挟んだからには、
警察で話したのは確定的でしょう。
そして、この作品で警察は大門兄弟しか描かれていません。不自然なほどに。このうち大門兄は逮捕でしょうから、消去法で、大門弟に話した事になります。

なんで描かれてないの

考えれば考えるほど、ホラーエンドは違和感しか無い。
ではなぜそんなエンドにしたのか?

色々考えたんですが、何らかの形で14話が作られるんじゃないかと思ってます。

最初はブルーレイBOX特典か何かで「その後」が語られるんじゃないか
と思ってましたが、公開されてる特典内容を見る限り、それは無さそうですね。

なので、消去法で漫画版で描かれるんじゃないか、と予想しておきます。

当たるといいなあ。


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