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おちおち風邪もひけない外国人の彼

「こちらに起こしください」

そう言って、手にはゴム手袋、顔にはフェイスシールド、
ヘッドキャップに防護服という完全防備のナースに
連れていかれたのは、病院外のプレハブ小屋。

前日に予約を取った際に場所は聞いていたものの、
駐車場の隅に設置された特別診療室は、病院から随分と距離があった。


これは、熱があるということが
今や大ごとになるんだなとわかった3日前の出来事。


パートナーが先週の金曜日から熱っぽいということで、
日曜日の夜に体温を測ってみたところ、なんと39℃。

既に2回のワクチン接種を終えていること、味覚もあるということから
市販の風邪薬で熱が下がるだろうと高をくくっていた。

夜が明けた月曜日の朝、もう一度計ってみたら
38.7℃とそこそこの高熱。

体は元気で、食欲も少しあったので、軽く朝ごはんを食べた後
「もしかしたらもしかする」ということで、
彼の住む市の役所に電話をすることにした。

彼はアメリカ人で、日本語はほぼ話せない。


彼の住む市の役所のホームページには、一応英語サービスのページがある。

なので「自分でかけてみる」と言って彼は市役所に電話をしてみたが、
英語を話せる職員がおらず、外国人対象の医療サービスセンターの
電話番号を教えられた様子。

市役所の人曰く、そこに電話をかけると、
どこの病院に行けば英語を話せる医者がいるのかを
教えてくれるとのこと。

すぐにかけてみたが、そこでも答えをもらえず、
また彼の住む市の役所の電話番号を教えられた。

いわゆる、たらい回し状態である。

もう見ていられず、いろいろと検索をした結果、
神奈川県の『発熱診療等医療機関の公表一覧』に行きついた。

そこで英語が話せる医者がいる病院をいくつか探し、
今度は私が電話をしてみた。

時はお昼が近くなってきた頃。

今から病院に行っても、診察時間が終わってしまうのは承知していた。

なので、次の日の予約でもいいと思って予約を取ろうとしたが、
ナースや医者は浮かない返事…。
「大きな病院に行ってください」と言うばかり。


ここまでざっと3時間はかかっている。


結局もう一度、彼の住む市の役所に電話をし直すことにした。

対応してくれたのは女性の職員の方。

今までの経緯を話し、困っていることを伝えると、
今度は丁寧に病院を教えてくれた。

ありがたくその情報をいただき、冒頭の病院の予約を取ったのだが、
私も彼も気持ちはモヤモヤしていた。

令和3年1月1日現在の神奈川県内の外国人数は226,766人で、
約41人に1人が外国籍県民らしい。


今回は私が付き添って病院に行くことができたが、
もし彼一人で何もかもやらないといけなかったら
なかなか厄介だっただろう。

以前に比べれば、今はいくつものサービスやシステムが
使えるようになったのだと思う。

でも、事故や急病、大災害が起きた時のことを考えると、
もし自分もパニックになってしまったら、
どうもしてあげられないのではと思ってしまう。


私自身、英語をもっと話せるようにしなくては。

彼自身にも日本語を覚えてもらうようにして、
日本での生活をもっと楽なものにして欲しい。


これからもっと社会が変わって、外国語を話せなくても、
翻訳機がなくても意思疎通ができるようになるのだと思う。

でも、それまで時間はまだまだかかるだろう。

だから、多国語翻訳ロボットが様々なところに設置されたら
いいなと思っている。

彼は特別診察室で血液検査、PCRとインフルエンザ検査をされた結果、
「ただの風邪」と診断されて事なきを得た。


熱も下がり、今日は元気に仕事に出かけている。


テレビをつけると、最近また新たなコロナ株のニュースが流れている。

皆さんも、あまり羽目を外し過ぎず、ご自愛くださいね。


今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。


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