見出し画像

【ゲームシナリオ志望者必須】ゲーム制作に必要なテキストとシナリオのお話し   2章-0「最初に訪れる、始まりの始まり」

2-0.最初に訪れる、始まりの始まり

「まーた0からかよ。どれだけ前提が必要なんだよ」と言う声が聞こえてきそうだ。すまない、“また“なんだ。

結局、ゲームのシナリオを含めたゲーム作りというのは、一人で作れる事はほぼ皆無で、物事には必ず順番があり、その順番に応じて適解が決まってくる。

「順番」と「対応」を連綿と続ける作業が、ゲーム作りだと思って貰えればと思う。

逆を言えばそのルーティンを把握出来れば、次に訪れる事件や出来事がある程度予想出来る様になる為、仕組みを知り想定しておく事が、自身の成長に繋がると思って頂きたい。


やあ。おめでとう。
キミは晴れて、今回のプロジェクトのゲームシナリオ担当に選ばれた。
ちなみにキミがシナリオを書くゲームは、どちらだい?

2-1.自らがディレクターでありシナリオであるゲーム
2-2.仲間がディレクターで、自分はシナリオを任されたゲーム

まずはここから分岐する。いきなりドデカイルート分岐だ。

アドベンチャーゲームなら、これで攻略キャラクターや主人公の生死が決まってしまい、手抜きだと批難されそうなほどに大きな分岐だが、現実ではまずこの分岐から始まる。現実とは厳しいものだと諸氏も理解しているだろう。

前者は小規模開発でのディレクター職でのシナリオ兼務で、自分のゲームを作りたい人用。
後者は大規模開発に参画し、シナリオライターとして任された人用である。

ここで分けた理由は一つ。「ゲームへの初期のアプローチ方法が変わる」為だ。

ディレクター兼務であれば、自分の考えた物がベースとなるため、企画時点でシナリオを加味した土台を作成する事が可能である。
逆にディレクターが別の開発者であり、シナリオ担当が自分だった場合は、ディレクターの企画書や方針を元にシナリオを書く必要がある。

これはどちらが良い悪いではなく、立場が変われば仕事が変わる訳で、まずはここを把握した上で、理解してから読み進めて欲しい。

と言うのも、ここで言った「立場が変われば仕事が変わる」は、ゲームの他のセクションと、シナリオセクションが大きく異なる部分に関わるからだ。

今の時代ゲームも分業制で、大手や大規模開発になればなるほど分業化と専業化が進み、また指示系統が長くなりすぎる為に、上意下達の簡素化が重要になって、上流からの指示に対して下流は反論を求められず、作業としてこなす事が求められる事が多くなった。

(これは上意下達、ウォーターフォール開発の是非を問う話ではなく、状況と規模によって使い分ける必要があると私は考えている。上に挙げた様な大規模開発になればなるほど、指示は簡素で明確な物、そしてそれを揺るがせない指示系統が必要になってくる。そうしなければ指示系統が混乱し、それに伴うリスクが非常に大きくなるからだ。詳しくはまた別の機会に……)

しかしながら、シナリオと言うセクションに関しては、開発フローの中で上流に組み込まれる事が多いにしてある。そして同時に、最下位の立場も持ち合わせる事がある。

何を言っているのかわからないが(以下略)と思う諸氏は多いだろう。
シナリオやテキストは、ゲーム制作における他の作業、例えばシステムやイラストの上位にあったり下位にあったりする、流動的なもの、もっと厳密に言えば、上位と下位にあるものなのだ。

例えば、アクションゲームで一つの攻撃アクションがあるとしよう。
この場合、シナリオやテキストとの相関は、以下の図の様になる。

これに係る、上位下位の関係性の内容を書き加えた物がこちら。

見ての通り、攻撃アクションの上位には、必ずシナリオ(設定)が来る。
そして、その上位下位には必ず関係性が存在している。
それは大体の場合で不可逆なので、上記の図の様に一方へと流れる事をまずは理解して貰いたい。

その上で、例えば魔法と剣の世界で、銃撃アクションを入れたいと言われても、世界観と相反してしまう為にそれは難しいと判断されるだろう。

この場合、シナリオ(設定)側から、銃撃はNGと言うか、魔法と剣の世界観の範疇で銃撃に似たアクションにしてもらう様に働きかける必要があるし、アクションを造る側は世界観を踏まえた上で、それらを反映させたアクションにするべきである。

また、攻撃アクションに対してフレーバーテキストがある場合は、アクションに準じた適切な言語化を行ったテキストをシナリオ側が作成する。また、テキストももちろん世界観に準じなければならない為、シナリオ(設定)の下位にテキスト(フレーバー)は存在する事になる。

前後に存在するテキスト

話を戻そう。
先に挙げたディレクター=シナリオかつ、シナリオがテキストも制作する場合、この図そのものが当てはまる。つまり一つの成果物をゲームの要素として作り上げる為には、シナリオの仕事はその前後に存在するのだ。

ディレクター≠シナリオの場合も、世界観などの補佐をシナリオが行うのであれば、世界観監修などはシナリオに任される事があるだろう。そうなるとやはりこの図の様に、タスクのサンドウィッチが発生する。

シナリオとテキストを細分化し、それぞれを専業にしてしまえばこの挟み込みは発生しないが、それ以外の場合はウォーターフォールの流れに当てはまりづらい事は理解して貰えるだろう。

このように制作の流れ一つを取っても、シナリオの立場によって制作物から制作順序、存在のプライオリティすら変わってしまう事が多いのがシナリオの特徴である。

まずはこれを踏まえた上で、上記に挙げた
2-1.自らがディレクターでありシナリオであるゲーム
2-2.仲間がディレクターで、自分はシナリオを任されたゲーム
この分岐を次回、まずは2-1から一つずつ説明していこう。


コラム ゲームの企画書とシナリオの関係

上記で「ゲームの企画書」と話題に出てきたので、ここで軽く「ゲームの企画書」について簡単に説明してみよう。と言っても、企画書作法などはたくさんの参考書籍が出ているため、そちらで勉強して欲しい。

まず「企画書」とは何か? 問われてさっと答えられる人は、おそらく経験者だろう。

「企画書」とは「概要書」であり、目的はゲームの「概要を伝える」「今は無い物を想像してもらう」であり、さらにその先の「標榜に据える」だったり「資金を捻出させる」だったりする。

ここで間違いやすいのが「設計書」と置き換えてしまう事だ。あくまで企画書とはゲームの概要書であり、仕組みを伝える物では無い。「設計書」としての役割は「仕様書」と言う物があるので、そちらに任せよう。

例えばクライアントへの企画会議で「この魔法はエネミーの残り体力の9割を削る代わりにプレイヤーの体力が1になる最後の手段として使います」とか言われても、クライアントは困ってしまう。それが想像できれば、企画書に記載するべきではない事は想像できるかと思う。

逆を言えば、「企画書」に、制作に必要な資料はそれほど含まれていない。
なので、自身がディレクターで企画書を作る場合は、例え自身がどれだけ思い入れがあろうとも、世界観の追求やキャラクターの掘り下げなどは行うべきではない。あくまで簡素に、わかりやすく書く事が大事になる。

例:キャラクター
妻子を殺された狂戦士。狂気と正気を行き来する。贖罪の為に主人公に同行。戦いの中で身代わりとなり死亡する。

過去も現在も未来も、様々な顛末があるだろうが、ごっそり省いてしまうのである。

また、今回は結末も書いているが、これは現状で想定できる物でも構わないし、なんならぼやかして興味を引かせる材料に使ってもいい。

ただし、クライアントが企画書を見て「このキャラ、最後にはどうなるの?」と聞かれた時に「考えていません」ではお話しにならない為、ある程度の目安はつけて置いた方がいいだろう。

(筆者が昔一緒に仕事した人は目安をつけていない場合、クライアントに聞かれた時に「どうなると思いますか?」と聞き返して、クライアントが考えている時間に目安を考えると言う荒技を使っている人もいた。その人のコミュニケーション能力が優れているからこそできる技だとは思うが、ここで重要なのは【クライアントの質問は、企画への興味なので、それを削ぐ方向には絶対に持って行かない、興味を絶対に掴んだら離さない】ことである)

ディレクター≠シナリオの場合は、上記の端的な一文からキャラクターを構築し、キャラクターのシナリオを作り上げねばならないのである。

もちろんディレクターもこれだけしか考えていない事はあんまり無いが、ディレクターはシナリオライターではない事が多い為、あんまり考えてない事もままある。
土台がどれだけあるにせよ、考えていない所を考えている所に合わせて作るのがシナリオの仕事になる。

本文でも軽く記載したが、改めて。

「ディレクター=シナリオライター」の場合は、構想から最大限削ぎ落とした文章を企画書に記載。

「ディレクター≠シナリオライター」の場合は、最低限の記載からシナリオとしての構想を膨らませる。

企画書の一文に対してですら、アプローチが全く違うのがおわかり頂けるかと思う。

ゲームに対してのシナリオの立場は、常にこのように立ち位置を問われ、その立ち位置からのアプローチを求められる。
立ち位置を読み間違えて提案してしまうと、越権行為と取られてしまったり、逆に不足が目立つ仕事となってしまう為、ゲームシナリオライターは常に立ち位置を明確にして、何を求められているかを判断しながら作業をしていく事が大事だと考えている。

ここまでの説明で執拗に前提が必要と言っている理由をご理解頂ければと思う。

いいなと思ったら応援しよう!