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不安な夜をじんわりと温める本 『眠れぬ夜はケーキを焼いて』

今日もまた、空が明るくなってしまった。

布団に入ったものの3〜4時間くらい眠れず、カーテンの隙間から夜明けの空が見えてちょっと凹む。
「眠くない時は一旦布団から出るといい」と知り布団を出てみるが、やはり眠気よりも先に夜が明ける。
過去のこと、未来のこと。ぐるぐると不安や考え事が浮かび、頭は冴え渡るばかり。(これが昼間に発揮されたらもっと仕事が捗るだろうに……!)

そんな不安な夜をじんわりと温めてくれる本が、午後さんの『眠れぬ夜はケーキを焼いて』だ。

本作は作家の午後さんによる、不安な夜の過ごし方を提案するコミックエッセイ。
生活リズムが不規則で真夜中に起きてしまう狼(午後さん)が、ケーキを作ったり食べたりする過程で不安な気持ちを打ち消していく。
ケーキ以外にもレンチンだけで作れる簡単レシピも紹介されており、作中の料理を作って楽しめるのも魅力の一つだと思う。

最初に書店でこの本を見かけたとき「真夜中にケーキだなんて贅沢……素敵!」と思い、タイトルに惹かれて購入した。

とくに気に入っているのが以下の部分。
不規則な生活リズムのため、真夜中に起床してしまった狼(午後さん)の言葉。

つまり夜中に起きて外出もできず
1日を無駄にしてしまったことからくる自分の不甲斐なさを
何かを作り出すことで生まれる達成感で打ち消そうとしているわけです

料理はいかにも正しい行ないという感じがして自尊心が高まる上に
成果物が美味しく食べられるので一石二鳥

第1話「真夜中にケーキを焼く話」より

朝・昼・夜の3食に比べれば、ケーキは必ず食べなくてもいいし、なんなら「余計なものを食べると太る・体に悪い」とか言われることもある。
そして、ケーキを食べるときは「ご褒美」とか「お祝い」といった優しい気持ちが含まれていることが多い。

そんなケーキを自分のために焼くという行為自体が一種の優しさで、労りの気持ちにつながるのかなと思った。
そして午後さんが仰るように、それを自分で作り出したことによる達成感は、自分を前向きにしてくれるのだろう。

余談だが、実家暮らし小心者の私はなんだか怒られそうで、真夜中にケーキを焼くには至っていない。しかし作中で午後さんがケーキを作り、ほかほかの焼きたてを美味しそうに食べる様子を見ると、自分を労われているような気持ちになる。

午後さんがケーキを食べ終わる頃には、私の不安も和らいで明るい気持ちになってくる。結局眠れずに空は明るくなるけれど、心持ちがまるで違うから不思議だ。

Discord名:ななみ
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