しゃべるピアノ【ショートショートnote杯】
僕は3年前にこの家にやってきたピアノだ。
そしてその日からずっと、この家に住む少年から酷い暴力を受けている。
近隣の住民は僕の悲鳴や呻き声を日々聞いているはずだ。
だが通報が入ったことは、まだ一度としてない。
なんとも世知辛い世の中だ。
一番辛いのは、少年がいつも同じ箇所を狙って攻撃してくることだ。
そういえば、友人の木琴や鉄琴、太鼓たちも皆同じ悩みを吐露していた。
ただ、少年は本当は僕を叩きたくないのだと、いつも言っていた。
母親に指示され逆らえないのだと。
少年と母親は僕の前で怒鳴り合いの喧嘩をすることも多かった。
ところが、先週末、いつもとは違う箇所に一撃を食らってから、僕は急に叩かれなくなった。
その日の夜には、揃いの制服を着た人たちが遊びにきて、僕の写真を撮ったり、粉をかけては払ったりしてきた。
そして、少年はなぜか皆に少年Cと洒落たニックネームで呼ばれるようになった。
そういえば、友人の木魚は昨日また激しく叩かれたらしい。
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