見出し画像

一億円の低カロリー【ショートショートnote杯】

僕の余命はあと数か月。

ものぐさな性格も災いし、30歳の今、体重は450キロある。ベッドからも、もう一人では起き上がることはできない。

そんな僕には人生で一つだけ後悔していることがある。

旅をしてみたかった。

いつかは世界中を旅したいと夢見ていたのだ。

まるで未来が見えていたかのように、僕は若い頃から自分に多額の保険金をかけていた。
死後支払われる保険金は、推定1億円。
その全額を、とある企業へ寄付することもすでに決めていた。

その企業は今、世界が注目するカプセル型のダイエットマシンを開発中なのだ。そのカプセルを一度飲むと生涯胃の中に留まり、摂取した余分なカロリーを自動で低カロリー化してくれるのだという。

完成したら、同じ病で苦しむ世界中の旅好きの仲間に配ってもらうよう、依頼している。

2年後、僕のその夢は叶った。

本当に幸せだ。

なんでかって?

それはカプセルに詰まった僕の想いが、みんなと一緒に世界中を旅できるからさ。

一歩も動かずにね。



#ショートショートnote杯 #小説 #短編小説 #ショートショート #超ショートショート #掌編小説 #ショートストーリー #一億円の低カロリー

※ショートショートnote杯参加作品(409字)

いいなと思ったら応援しよう!